研究活動支援対象者の活動レポート

「音楽教育の情報化」と「情報教育の音楽化」 -音楽文化を広める情報教育を目指して-東京農工大学総合情報メディアセンター 辰己丈夫 准教授 インタビュー2008年12月19日 取材

音楽をプログラミングすることで、情報教育の新しい成果が生まれた

現在の初等中等の情報教育には、PCスキルに代表される「情報活用の実践能力」、プログラミングやデータベースといった「情報の科学的な理解」、著作権や個人情報などの「情報社会へ参画する態度」という3本の柱があります。今回の実験では、その中のプログラミングと著作権について、プログラミング言語「ドリトル新しいウィンドウで開く」を使った実証授業を、東京都立町田高校と大阪府立桃谷高校で実施しました。

辰己: 「ドリトル」は日本語の単語を用いて書くプログラミング言語で、お絵描きをしたり、ゲームを作ったりすることもできます。最初のバージョンでは非常に簡単な演奏をすることもできたのですが、ドリトルの開発者に音楽上の繰り返しや条件分岐など、機能の充実を提案し、実装していただきました。今回の実証授業では、この「ドリトル」を使って生徒たちにそれぞれメロディをプログラミングしてもらいました。

実証の結果は非常に良かったと思います。特に、従来のプログラミングの授業に関心が薄かった女子生徒が熱心に取り組む姿が見られました。また、担当いただいた先生からは「普段集中できない生徒が熱中して取り組んでいる」との声もいただきました。また、それまで楽譜が読めなかった生徒の中には、プログラムを理解することで音楽の構造が理解できるようになり、楽譜が読めるようになった例もあったそうです。

プログラミングの授業に音楽の要素を追加することで、情報教育の成果に加えて音楽そのものへの興味にもつながっていることがうかがえます。また、もう1つのテーマである著作権についても、今回の実証授業で得るものがあったといいます。

辰己: 授業が終わりに差しかかったとき、ある生徒が「もし自分が職業として音楽をやっていたら、苦労して作った音楽作品を他人がコピーして使うことは、困ることだ」ということを発言したのです。従来の著作権教育に多く見られる「~してはいけない」というメッセージも必要と思いますが、それよりも創造性やクリエイティブなところから、著作権を学ぶことも効果的だということが、今回の実証授業でよく分かりましたね。

東京都立町田高校での様子

大阪府立桃谷高校での様子

今回の実証授業に使用したプログラミング言語「ドリトル」