研究活動支援対象者の活動レポート

音響特性を制御できるユニークな材料の創製豊橋技術科学大学生産システム工学系 戸田裕之 教授 インタビュー2009年01月23日 取材

ユニークな試料から創製した材料で、音響に明らかな変化が生じた

今回の実験は、アルミニウムの削り屑にさまざまな素材を混ぜ合わせ、そこに強い圧力を加えてサンプル材料を作製。そのサンプル材料ごとに音響特性を調べるというものです。混ぜる材料には、金属の削り屑や木材チップ、ガラスやバーミキュライト、アクリルや発泡スチロールなど、これまでにない多種多様な素材が選ばれました。

戸田: アルミニウム合金に混ぜ合わせる試料は、ホームセンターなどで売っているものなど、なるべく簡単に手に入る素材から選びました。バーミキュライトといっても石ころですから。そうした材料に強い圧力をかけて成形すると、元の大きさから10分の1くらいの大きさになります。その中に層状の組織ができあがるのですが、その断面を観察して配置状態が音響に与える影響を調査することも目的の1つでした。

音響特性の調査は、サンプル材料を4つに分割して、その上にスピーカーを乗せて音を流すという仕組みで行なわれました。まず、兵庫県立大学のオーケストラ部員10名に、姫路公会堂でクラシック音楽を1分間聴いてもらい、音の特徴を評価してもらいました。次に、単調な音を流して信号を解析し振動や周波数の特性の違いを計測しました。

戸田: 何も置かなかったときと創製した材料をインシュレーターとして置いたときの評価の違いは明らかで、「迫力がある」、「伸びがある」、「抜けが良い」、「深い」、「聞きやすい」など、おおむね良い評価が得られました。つまり、今回創製した材料をインシュレーターとして使用した場合、聴感に何らかの変化が生じることが分かりました。

また、定量的な評価としては、それぞれの材料で音の波形が違うことが判明しましたが、その中でも無機物が入った材料と有機物が入った材料とで、大きく2つの特徴に分けられることが分かりました。
有機物を混ぜた材料は減衰が大きくなるだけでしたが、バーミキュライトやガラスなど無機物を混ぜた材料の場合、特定の周波数領域が強調されたり残留したり減衰したりと、面白い特性が見られました。

事件セットアップの図

設置試料を変えたときの聴感の変化

台振動波形の比較 1.試料設置なし 2.バーミキュライト20% 3.発泡スチロール20%