音楽支援事業開く
研究活動支援対象者の活動レポート
バイオリン演奏中の左手指の力発揮とその音操作への関与について大阪大学大学院医学系研究科 木下博 教授 インタビュー2009年11月27日 取材
次世代の優れた音楽家の育成につなげたい
本研究では、プロのオーケストラで活躍している方を含め、約30人のバイオリニストに協力を仰ぎ、多くのデータを得ることができました。この研究成果の活用法の1つとして、バイオリンの演奏指導の場においてどのような運動が正しいのかをデータで実証することが考えられます。しかしながら、そのためには、「いい音とは何か」という定義が必要と木下教授は語ります。
木下: 演奏し終わった後の音楽家に「どういう意図でその演奏をしていたのか」と聞いても、みんな「いい音を出したいから」としか答えられません。どのくらい力を入れたらいい音になるのか、その関連性がまだ解明できていないのです。演奏指導について研究するとなると、技法の教え方から教師と生徒間の会話に至るまで、すべて網羅して突き詰めてデータ化する必要があると思います。
また、今回の研究では、世界的な演奏家のデータを得ることはできませんでした。今後はそういった方々のデータを取得して、「いい音」の定義につなげていければと思います。さらに、右手のボウイング(弓の運動)についても研究していきたい。それが私たちの次のステップだと思います。
さらに、木下教授は、今後の方向性として、バイオリン以外の楽器についても研究を進めたいと考えておられます。
木下: 例えばホルンであれば顔の筋肉の力を計測する必要があるし、声楽なら喉の筋肉。それぞれ違うのでいろいろと調べてみたいです。
音楽を科学的に研究したいという学生がいる限り、一緒に研究を続けていきたいと思います。私が持っているノウハウと、学生たちの音楽知識をマッチングさせながら研究を続けることが、いい音楽家の育成に結び付けばうれしいですね。
音楽家に着目した本研究は、演奏技術向上やケガの予防だけではなく、音楽教育のさらなる発展にもつながることでしょう。木下教授の今後の研究にも、期待がかかります。
支援対象者プロフィール(取材時)
木下博 教授
大阪大学 大学院医学系研究科
小幡哲史 博士課程
大阪大学 大学院医学系研究科
支援対象研究
- 課題名
- バイオリン演奏中の左手指の力発揮とその音操作への関与について
- 研究期間
- 平成20年4月~平成21年3月