研究活動支援対象者の活動レポート

音楽演奏中の視線行動に関する研究大阪大学大学院人間科学研究科 河瀬諭 研究員 インタビュー2010年12月13日 取材

大阪大学大学院人間科学研究科の招聘研究員であり、人間が音楽や映像に接したときに感じる感覚的なニュアンスを伝える情報、いわゆる感性情報を処理・伝達する人間行動の特性について研究しておられる河瀬諭研究員(以下、河瀬研究員)。そんな河瀬研究員の研究「音楽演奏中の視線行動に関する研究」が、2009年度研究活動支援の対象になりました。今回は、その内容について、大阪府吹田市にある大阪大学吹田キャンパスの一室で河瀬研究員にお話をお聞きしました。

演奏中のコミュニケーションにおける視線の重要性について探る

感性情報心理学をベースに、人間のコミュニケーションについて研究を進める一方、ご自身の音楽演奏経験から、人間のコミュニケーションと音楽のかかわりに対して深い関心をお持ちの河瀬研究員。相愛大学音楽学部では非常勤講師として教壇に立ち、音楽心理学の指導にあたっておられます。また、以前から、言語や言語に付随する要素を排除した環境で、太鼓を使ったコミュニケーションについての研究を進めており、その中で、今回の視線行動に関する研究の着想を得たといいます。

河瀬諭 研究員

河瀬: 音楽とコミュニケーションとのかかわりについての話をするとき、音で感情が伝わるかという議論になることが多いのですが、生で演奏が行なわれるときには目からの情報が大きいとされています。しかし、実際に目からの情報がどういうものなのかはほとんど研究されていないのです。

1990年代半ばくらいから、演奏中のコミュニケーションには身体の動きや視線行動、姿勢などいくつかのチャネルが効いているといわれ始めましたが、各チャネルがどのくらい重要で、どのように使われているのか、どのように相互作用しているのかなどはまったく研究されていません。しかし、私は、コミュニケーションを知る上ではそこが重要なのではないかと考えて研究を進めることにしたのです。

まずは、ご自身で、さまざまなコンサートに足を運んだり、アンケートを採ったりして、演奏者同士のコミュニケーションにおける各チャネルの重要度を測定した河瀬研究員。その結果、「音」、「呼吸」の次に「視線」の重要度が高いことを突き止めました。そして、この研究をさらに深掘りしていくため、「ヤマハ音楽支援制度」への応募を決意したそうです。

河瀬: インターネットでこちらの支援制度を知りました。世の中にある音楽関連の支援制度の多くは、演奏者や音楽学などへの支援制度が多い中、研究自体への支援はこちらだけだったと記憶しています。以前にも1度応募したのですが、2度目に応募した2009年度のときに採用していただきました。