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研究活動支援対象者の活動レポート
聴衆は本当に音楽を楽しんでいるんだろうか?
~聴衆の皮膚表面多次元循環解析による自律神経機能解析東北大学 加齢医学研究所 非臨床試験推進センター 山家智之教授 インタビュー2019年07月01日 取材
音楽と映像を組み合わせることで、どのような反応が得られるか解明したい
今回の実験により、映像情報から脈波・心拍を抽出し、揺らぎのカオス解析や脈波伝播時間から自律神経機能を定量診断できると確信を得た山家教授。次のフェーズとして、音楽に映像を加えたコンテンツで、聴覚と視覚を同時に稼働させた場合の自律神経情報についても、研究を進めています。
山家:今回の被験者になってもらった学生たちの多くは、ふだんから優れたピアノ演奏を聞き慣れていないとのことで、期待したほど「音楽に感動している状態」にはなりませんでした。そこで、被験者に音楽と映像を合わせたコンテンツを提示することを考えています。ちなみに、癒やしの感覚を与える音楽と映像を見ると、脳の視覚連合野と聴覚連合野の血流が増加することが分かっています。心が安らぐことが期待できる状況を与えることで、別の反応が出てくるかもしれない、という方向性で再び実験を続けているところです。
研究が進み、この技術が何らかのシステムとして製品化・市販化されることになれば、音楽療法の効果や、聴衆が音楽をどのように感じているかを、自律神経反応から定量診断評価することが一般的になるかもしれません。また、山家教授はこの技術の発展型として、人工知能との融合を考えています。
山家:2045年、人工知能が人間を超えるといわれています。そうした未来に向かう過程で、私たちは人工知能と相互的にやり取りする機会が増えるでしょう。そのとき、この技術を活用すれば、人工知能側が人間の顔色を見て、人間の心理状態に合わせて答えを導き出すことも可能になると考えています。
この研究が進むことで、「音楽療法」の医学的な効果を科学的に定量診断できるだけではなく、人間の心理状態を外面から読み取ることができるようになるかもしれません。今後のさらなる研究進展を期待しています。
支援対象者プロフィール(取材時)
山家智之 教授
東北大学 加齢医学研究所 非臨床試験推進センター
支援対象研究
- 課題名
- 聴衆は本当に音楽を楽しんでいるんだろうか?
~聴衆の皮膚表面多次元循環解析による自律神経機能解析 - 研究期間
- 平成30年4月~平成31年3月