音楽支援事業開く
活動リポート:郡司 菜月(ヴァイオリン)
2023年度の支援対象者で、現在ハノーファー音楽演劇メディア大学国家演奏家資格課程、及びハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団アカデミーに在籍の郡司菜月さんにお話しを伺いました。
音楽を始めたきっかけ
ヤマハ音楽教室の講師だった母の影響で、私も2歳半からヤマハ音楽教室に通い、遊ぶように音楽を始めました。4歳になった頃、ヴァイオリンを演奏する素敵なお姉さんの姿を見て、「私もやりたい!」と憧れを抱いたことがヴァイオリンを始めたきっかけです。地元のヴァイオリン教室でレッスンを受けながら、最初はただただ演奏することが楽しくて、両親や周りの大人たちに褒めてもらいたい一心でした。幼稚園や小学校の友達だけでなく、通っているヴァイオリン教室でも同世代の友達ができて一緒にアンサンブルをしたことは、幼い私にとってとても大切な時間でした。今思えばこの幼い頃の「音楽=楽しい」が、私の音楽の原点となっているのかもしれません。
小学3年生の頃に見た「のだめカンタービレ」の影響で「音大ってすごい、留学ってすごい、私も絶対ヨーロッパで音楽を学びたい!」と強い憧れを抱きました。毎日ヨーロッパで音楽をしながら暮らす自分を想像しては心躍らせていたことを今でも鮮明に覚えています。
印象に残った経験
2020年秋に憧れのヨーロッパ、ドイツへ留学し、もうすぐ4年が経とうとしています。
コロナ禍での留学は思い描いていた留学生活とは異なり、慣れない環境の中でそのギャップに苦しむことが多くありました。ドイツに来てすぐにロックダウンになったため、お店は全て閉まり、演奏会やコンクールも中止。長い時間立ち止まっているような気がして、留学してすぐの頃はよく不安に駆られていました。しかしそんな中でも、師匠、クシシトフ・ヴェグジン教授がいつも優しく気にかけてくださり、先生の厳しくもパワフルで熱心なご指導を受けるレッスンの時間がドイツ生活の中で一番の幸せでした。
また先生のクラスは学校のホールで週に2回の試演会があります。他の門下生たちの演奏を聴くことで刺激も受け、演奏後にはお互いの感想を伝え合ったりするなど、恵まれた環境で音楽を勉強することができています。
留学して半年を過ぎた頃から少しずつコロナ規制もなくなり、延期されていた国際コンクールも復活し始めました。近隣国で開催されるさまざまな国際コンクールに挑戦できることも、ヨーロッパ留学の魅力の一つだと思います。先生のクラスは学校の中でも特に人数の多いクラスなのですが、コンクール前には頻繁にレッスンや演奏会の機会をくださったり、またコンクールへ出発する前日には、「もし何か不安になったらいつでも電話してきていいからね、パワーをあげるから!」と仰っていただいたりと、お忙しい中でも全力で一人一人と向き合ってくださる素敵な先生です。本番前によく悩んでしまう性格の私にとってそんな先生の存在は本当に心強く、演奏技術面だけでなくそのお人柄からも学ぶことが多くあります。
2023年秋より、留学中の目標の一つであったハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団のアカデミー生としてオーケストラを勉強しています。月に2回程の定期演奏会(1プロジェクト2〜3回公演)やアカデミー生による室内楽演奏会への参加など、プロフェッショナルな現場に身を置き、素晴らしい団員の方々に囲まれながら本当に幸せな経験、時間を過ごさせていただいています。オーケストラ旅行でドイツ国内のいろいろな街に行けるのも楽しみの一つです。先日はずっと憧れていたホール、ハンブルクのエルプフィルハーモニーでの公演でした。また私の在籍しているアカデミーでは団員の方からのレッスンも受けることができ、毎回のレッスンが新しい発見の連続です。ソロの勉強とはまた違った学びが多くあり、そのレッスンはかなり緻密で、前回のレッスンでは最初の3つの音だけで1時間のレッスンが終わってしまいました。オーケストラの経験も積みながら音楽家としてさらに成長できるチャンスをいただけているこの環境に、日々感謝しながら勉強することができています。
今後の目標
幼い頃に遊ぶように楽しく始めた音楽は、その後たくさんの人とのご縁に恵まれ、私の人生に彩りを与え豊かにしてくれました。そんな音楽を1人でも多くの方々に伝えていける音楽家になれたら、どんなに幸せなことだろうと思います。終わりのない学びの道の中で、一生を通して音楽と真摯に向き合いながら、さまざまな音楽、文化、価値観に触れ、人としても豊かな音楽家になりたいと思います。また私がドイツ留学を通して学んだ音楽、経験を、将来は後進の指導にもあたり、次世代へ繋げていきたいです。
郡司 菜月(NATSUKI GUNJI)さん プロフィール
- 1997年 福岡県中間市出身
- 2011年第65回全日本学生音楽コンクール北九州大会中学校の部第1位、及び全国大会中学校の部第3位、他多数上位入賞、12歳で九州交響楽団とソリストとして共演の他、これまでにテアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ、ポーランド放送アマデウス室内管弦楽団などと共演
- 桐朋女子高等学校音楽科を卒業後、昭和音楽大学弦管打楽器演奏家IIコースに特待生として入学し、優等賞を得て卒業
- 2020年より渡独、ハノーファー音楽演劇メディア大学大学院修士課程を最高得点を得て修了、現在、同大学国家演奏家資格課程にてクシシトフ・ヴェグジン教授に師事
- ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団アカデミーに在籍
- 2022年第16回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール出場
- 2023年ヴァスコ・アバジェフ国際ヴァイオリンコンクールにて第2位、特別賞を受賞
- 使用楽器は、ニーダーザクセン財団より貸与されている1793年製Joseph Gagliano
今後の演奏会予定
- 郡司菜月 ヴァイオリン・リサイタル
- 2024年7月28日(日)14:00開演
- @黒崎ひびしんホール(福岡県北九州市)
https://www.kurosaki-bunka.jp/organize/detail.html?id=4611