―― 本物の音楽とは、どのような音楽ですか?
本物の音楽とは、演奏者や楽器のレベル、録音環境など、あらゆる点で品質が高い音楽のことです。こうした本物の音楽で、子どもたちの耳を育てることを目指しています。最近の子どもたちは昔と比べますと、多くのさまざまな音楽に接する機会が増えています。ある意味、大人が考えているよりも、子どもは音の良しあしを分かっているのです。質の高くない音楽ですと、子どもたちは繰り返し聴かなくなってしまいます。ヤマハとしては、レッスンで使う音楽を繰り返し家でも聴いてほしい。ですから良い音、質の高い演奏にこだわるのです。子どもたちが繰り返し聴きたくなるような本物の音楽を、楽曲として提示することがヤマハのこだわりです。
―― 子どもたちの自主性を育むために、本物の音楽が必要ということでしょうか。
子どもたちは、仮に質のあまり高くない教材をレッスンで用いた場合、こちらが促してもなかなか自分から取り組もうとしません。しかし、質の高いものに接したときは、何も言わなくても自分から取り組んでくれます。自分から取り組もうと思ってくれれば、それは継続するのです。ヤマハの教育方針は、決められたことをさせる教育ではなく、きっかけを与えて子ども自身が取り組みたくなる教育です。そのために最も必要なことは、緻密なカリキュラムと講師の方々の指導力などですが、そこに関与する教材の力は大きいと感じています。レッスンでやった以上のことを、子どもが自らやりたくなる仕掛け作りも、ヤマハ音楽教室の特長だと思います。
トップレベルのオーケストラやアレンジャーを起用して制作
―― 2016年4月に導入した新教材には、新日本フィルハーモニー交響楽団による演奏が盛り込まれているそうですね。
教材にプロのオーケストラによる演奏を収載しているのも、品質へのこだわりによるものです。これまで教材には海外の著名なオーケストラを起用してきましたが、今回はじめて国内のオーケストラを起用しました。
近年は、多くの日本の一流オーケストラが、映画・アニメやゲームの劇伴(伴奏音楽のこと)に起用されています。また、一流のアレンジャーもそちらの分野に多く集まっています。今回、ヤマハの教材には、そういった世界で活躍中のアレンジャーにもご協力いただいています。大人が聴いても十分に楽しめる内容になっていると思います。
昨年秋に収録した、新日本フィルハーモニー交響楽団(指揮:梅田俊明氏)による『二人のりじてんしゃ』のメイキング映像をご覧ください。
『二人のりじてんしゃ』… イギリスのシンガーソングライター「ハリー・ダクレ(Harry Dacre)」が1892年に作詞・作曲した楽曲。長年、教材曲として親しまれていましたが、今回新たにオーケストラによる音源収録を行いました。
※次回は後編として、教材制作時のこだわりや子どもたちに伝えたいことについてのインタビューをご紹介します。