ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される若手音楽家への支援として「音楽奨学支援」(13歳以上~25歳以下)を実施しています。
今回は2018年度の支援対象者で、現在、国立音楽大学演奏創作学科でウッドベースを専攻されている小西佑果さんにお話を伺いました。
プロフィール:小西 佑果(コニシ ユウカ)1998年生まれ、石川県金沢市出身。
10歳より金沢ジュニアジャズオーケストラ“JAZZ-21”に入団、エレキベースを始める。
14歳でウッドベースに転向し、ビッグバンド活動を通じて国内外で演奏。
2012年ニューヨークおよびバッファロー(アメリカ)、2014年ゲント(ベルギー)、2015年第14回東京ジャズ野外ステージで演奏。
坂井紅介氏、片岡雄三氏ら数多くのプロのミュージシャンと共演する。
現在、国立音楽大学演奏創作学科ジャズ専修2年次在学中。井上陽介氏に師事する。また今年度より国立音楽大学Newtide Jazz Orchestraのメンバーとして活動中。都内でセッションホストやライブなどの演奏活動も行っている。
音楽を始めたきっかけ
小学3年生のときに、同級生に誘われて弟とジュニアジャズビッグバンドの見学に行きました。それまで音楽経験は全く無く、ジャズを聴くのも初めてでしたが「なんとなく楽しそう」と思い入団しました。最初はトロンボーンを吹いていましたが、翌年になって「みんながあまり演奏していない楽器をやりたい」と思い、エレキベースに転向しました。
本番を何回も重ねていくうちに、周りの人たちと一緒に演奏することがとても楽しくなりました。演奏後にお客さまから「とても楽しかったよ!」と笑顔で言われて嬉しかったし、真剣に音楽に向き合って心から楽しんで演奏すれば、それが必ず聴き手に伝わることを学びました。
中学2年生でウッドベースを始めましたが、最初は血豆ができ、指が痛くて辛かったです。徐々に楽に弾けるようになると、ウッドベースの温かい低音に魅了されて、ベースを弾くこと自体がとても楽しくなりました。
今まで印象に残った経験、先生、レッスン
高校1年生の夏に、ベルギーのゲントで毎年開催されている「HALEWYNSTICHTING
JAZZ CLINIC」に参加しました。伝統のあるジャズワークショップで、毎年若者から年配の方まで100人近くが参加します。それまではビッグバンドジャズしか演奏したことがなく、ソロもほぼ未経験でしたが、約一週間にわたり、昼はコンボ形態でのアンサンブル、インプロビゼーション、理論について学び、夜は他の受講生と一緒にジャズセッションをしました。最初は初めての環境に慣れずとても緊張しましたが、全てが新鮮で、また一緒に演奏することで友達も増え、とても充実した一週間でした。
最後のクロージングコンサートでは、キャンプ中に受講生でランダムに組まれたコンボで演奏しました。一週間かけてリハーサルを行い、ディスカッションを交えて曲のアレンジを決めました。このキャンプを通じて、自分の意思を持って演奏することがどれほど大切であるかを実感しました。
高校3年生のときに国立音楽大学のジャズ専修を受験することを決めました。
入学してからは、日本を代表するジャズミュージシャンの先生方から日々直接教えが受けられることに感動しています。
入学時にジャズピアニストの小曽根真教授が言われた「出来ないことは宝物」という言葉は、演奏がうまくいかず落ち込んだ時にいつも支えになってくれています。先生方からはジャズのアカデミックな部分だけでなく、音楽家の「心の部分」についても教えを受けています。
高い演奏技術を身につけることは、音楽を仕事としていく人にとってはもちろん大切なことですが、人に感動を与える音楽家になるための心の持ち方や、音楽への向き合い方を教えてくださる先生方に囲まれていることはとても幸運なことだと思います。また同じ音楽家を志す同世代に囲まれて学校生活を送ることができてとても嬉しいです。
現在、ジャズベーシストの井上陽介先生に師事しています。先生とのレッスンは毎回とても楽しく刺激的です。その中でもとても印象に残っているのは、「“これしかない”と思えるもの、本当に自分が弾きたいものを弾けることが大事だ」と教わったことです。
「自分はこれが弾きたいんだ!」と確信することは本当に難しくて、今後の自分にとっての大きな課題ですが、自信を持って人に伝えることができるように頑張りたいと思います。
影響を受けた音楽家
高校生のときにYoutubeでChristian Mcbrideの演奏を聴き、ずっしりと沈み込むような太いサウンドと、力強く前に進んでいくグルーヴに感動しました。少しでも彼のように、ウッドベースの音色の良さを最大限に生かした演奏ができないか模索しています。
同時期、ジャズピアノが大好きでピアノトリオの演奏をよく聴いていました。当時は、特にBill Evans trio、Oscar Peterson trio、小曽根真 the trio、北川潔トリオを聴きました。
3人の小編成だからこそ、お互いを聴きあって信頼しあえば、どこへでも自由に行けるような気がして、いつか自分もそういうトリオを作って活動したいです。
最近は、ベーシストではJohn Patittuch、Dave Holland、Pestros Klampanis を聴きます。
彼らがそれぞれ関わっているバンドは、演奏する曲調がコンテンポラリーなものも多いため、とても新鮮で面白いです。またドラマーのBrian Bladeが好きで、彼の、演奏中の他のミュージシャンの音に対する集中力とレスポンス能力の高さには感激します。
今後チャレンジしたいこと、将来の夢
ヤマハ音楽奨学支援対象者に選んでいただき、恵まれた環境で勉学を続けることができることを感謝し、とても嬉しく思います。今後は高い演奏技術を身につけようとするだけではなく、自分の演奏する音楽の背景についての理解を深める必要性を感じています。
それは、最終的に自分の演奏を説得力のある深いものにすることに繋がると思います。
ジャズはもちろんですが、他のジャンルの音楽に対しても幅広く関心を持って勉強していきたいです。
また、近い将来ジャズの生まれた土地であるアメリカに留学し、現地のミュージシャンたちの音を聴き、本場のジャズのグルーヴを肌で感じたいです。そのためにも今できることを全力で頑張りたいと思います。