ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される若手音楽家への支援として「音楽奨学支援」(13歳以上~25歳以下)を実施しています。
今回は2018年度の支援対象者で、現在、モスクワ音楽院附属中央音楽学校に在籍、ピアノを専攻されている進藤実優さんにお話を伺いました。

プロフィール:進藤 実優(シンドウ ミユ) 2002年生まれ 愛知県大府市出身
2018年3月 愛知県大府市立大府西中学校卒業
2018年4月 モスクワ音楽院付属中央音楽学校 予備科 ピアノ専攻入学
杉浦日出夫氏に師事、また二宮裕子、関本昌平、本村久子、細野真由美の各氏にも指導を受ける、モスクワでは ヴァレリー・ピアセツキー氏(中央音楽学校校長)に師事
2010、2011年 ピティナ・ピアノコンペティション全国大会 C級、D級金賞
2013年 全日本学生音楽コンクール全国大会 小学校の部 第3位 横浜市民賞
2014年 同 第1位 横浜市民賞
2015年 同 中学生の部 第2位 横浜市民賞
2015年 大阪国際音楽コンクール グランドファイナル 第1位(総合第1位)
2016年 ジーナ・バッカウアー ジュニアコンクール(米・ソルトレイク)第3位
2017年 浜松国際ピアノアカデミーコンクール 第1位 中村紘子賞
これまでに国内各地でリサイタルを実施。セントラル愛知交響楽団、名古屋フィルハーモニー管弦楽団と共演。またニューヨーク(カーネギーホール)、ウィーン、イタリアで演奏。
ロシアンピアノスクール、浜松国際ピアノアカデミー、霧島国際音楽祭、エッパンジュニアピアノアカデミー(イタリア)、ウィーン国立音楽大学トーマス・クロイツベルガー教授マスタークラスを受講
音楽を習い始めた頃
4歳からピアノを始め、5歳から杉浦日出夫先生のもとでレッスン受けました。
先生はすごく知識が豊富な方ですが、知識に偏ることなく、どんな曲を弾くときも絶えず「美しい歌、音楽」がピアノから流れなければいけないということを教えてくださいました。
また、小さい頃から私が「弾きたい」と思った曲はどんな曲でも弾かせてくださり、決して「あなたにはまだ早い」とはおっしゃいませんでした。もちろん弾きこなせていなかったり、子どもなりの完成度だったりした曲もたくさんあったと思いますが、その代わりに、あれも弾きたい、これも弾きたい、とピアノに対する意欲をたくさん与えていただけたと思います。また、私が弾きたい曲をいつもたくさん持っていくのですが、毎回全ての曲を見てくださり、1回のレッスンが3、4時間になることがほとんどでした。本当に先生には感謝しています。
印象に残っているレッスン
杉浦日出夫先生のご指導で特に強く印象に残っていることの一つは、『クラーマー=ビューロー60の練習曲』のレッスンです。同じ門下のお姉さんたちが弾いていて憧れだったクラーマーを、小学4年生の時にいよいよ先生から「やりましょうか?」と言っていただきました。嬉しくて、翌週のレッスンの時に張り切って2、3曲持っていったと思います。そうしたら、そのレッスンで曲を見ていただいた後、先生が静かに「クラーマーを2、3曲ずつやってくる人はいませんよ。クラーマーは10曲くらいまとめてやらないと、1曲1曲がよくわかりません」とおっしゃったのです。私は「そうだったのか」と思い、次の週には新しく10曲を練習して持っていきました。ところがレッスンの後、先生は穏やかに「クラーマーを間違えて弾いてくる人はいませんよ」とおっしゃいました。私は「しまった」と思い、次のレッスンまでに「絶対にひとつも間違えないぞ」と思って、前回残った5曲と新しく練習する5曲、合わせて10曲を間違えることがないように練習していきました。
そして次のレッスンでは、先生が「クラーマーは全てテンポ表示を守ります」とおっしゃいました。そこで私は、残った5曲と新しい5曲を、今度は間違えることなくインテンポで全て弾けるよう練習しました。でも次のレッスンでは「クラーマーはインテンポで弾くだけではいけません。指の練習ではないのですから、音楽的に弾きます」とおっしゃいました。
私は必死になって残った5曲と新しい5曲を、今度は間違えず、インテンポで音楽的に弾けるよう練習していきました。そしてとうとう次の週のレッスンで、先生がようやく「よく頑張りましたね」と褒めてくださったのです。そのお言葉がとても嬉しかったのを今でも鮮明に思い出します。そんなふうに始まったクラーマーのレッスンでしたので、最初は1年くらいかかるのではないかと思っていたのですが、何とか3ヶ月くらいで終わることができ、ほっとしたのを覚えています。
モスクワでの生活
モスクワは、留学する前は私にとって全く想像ができない国でした。しかし来てみたら思ったより街はきれいだし、治安もそれほど悪くないと感じました(どんなに悪い国だと想像していたのでしょう…)。何よりモスクワ音楽院付属中央音楽学校は世界中から留学生が来るので、寮も完備されており、安全面を特に重視し18才以下は一人で街を歩けません。多少窮屈で不便さはあるかもしれませんが、音楽を勉強する上ではとても良いと思っています。中学・高校生用の寮から学校までは徒歩2、3分。隣にモスクワ音楽院があり、そのホールでは連日素晴らしいコンサートが開かれ、学生は無料で聴くことができます。
また留学生は皆1年間予備科に通うというシステムも、最初は日本と比べて遅れるのではと気になったりもしましたが、今は(ロシア語とソルフェージュと実技レッスンだけなので)ピアノの練習とロシア語の習得に集中できることを、むしろ大変ありがたく感じています。
せっかくロシアに留学しているので、今後は少しずつロシア音楽を学んでいきたいです。
ロシアでは同じ世代の、同じ学校の子がものすごく上手だったりします。そんな彼らの素晴らしい演奏を聴いて、自分も刺激を受けつつ成長できたら…という思いで日々頑張っていきたいと思います。