ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される若手音楽家への支援として「音楽奨学支援」(13歳以上~25歳以下)を実施しています。
今回は2018年度の支援対象者で、現在、兵庫県立芦屋国際中等教育学校3年に在学中の、チェロの北村 陽さんにお話を伺いました。
プロフィール:北村 陽(キタムラ ヨウ)2004年兵庫県西宮市出身
9歳でプロ・オーケストラと初共演、10歳で初リサイタルを行う
以来、関西フィルハーモニー管弦楽団、東京交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、兵庫芸術文化センター管弦楽団、山形交響楽団、中部フィルハーモニー交響楽団、小林研一郎指揮 東京フィルハーモニー交響楽団、大友直人指揮 群馬交響楽団と共演
2017年 第10回若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール、満場一致で優勝
2017年 関西元気文化圏賞 ニューパワー賞受賞
2018年 ロシアで開催されたInternational Tchaikovsky Youth Festivalに招待される
現在、兵庫県立芦屋国際中等教育学校3年に在学中
テレビ朝日「題名のない音楽会~神童たちの音楽会2017」、BSテレ東「エンター・ザ・ミュージック」などに出演。
W・ベッチャー、P・ミュレール、M・マイスキー、M・ブルネロ、K・ロージン、S・コンツ、J-P・マインツ各氏のマスタークラスを受講。
これまでに、山崎伸子、太田真実、故ギア・ケオシヴィリの各氏に師事。
使用楽器は、1668年製「カッシーニ」(上野製薬株式会社より貸与)
音楽を始めたきっかけ
3歳のとき、ディズニー映画「ファンタジア2000」の、デュカス『魔法使いの弟子』が大好きで、最初は、そのテーマを吹いていたファゴットがやりたいと思いました。本物のファゴットが見たいと楽器店にも連れていってもらいましたが、お店の人に子供サイズの楽器がないと言われてしまいました。次に、ファミリーコンサートで、コントラバスのお兄さんが、楽器をくるくる回して楽しそうに演奏しているのを見て、コントラバスをやりたいと思いました。けれども、この楽器も子供サイズがありませんでした。
ある日、楽器の図鑑を見ていたときに、ファゴットと同じ音域でコントラバスに似た形のチェロを見つけました。CDでチェロの音楽を聴いてみて、「絶対この楽器をやりたい!」と思いました。でも、すぐには習わせてもらえなくて、母と一緒に作ったダンボールのチェロで、半年近く鼻歌を歌いながらチェロを弾くまねをして遊んでいました。
そして、4歳になってやっと本物のチェロを習えることになりました。
私の母は、私が小学生の頃までは、ピアノ講師をしていました。でも、私はピアノに全く興味を示さなかったそうです。
印象に残った経験、先生、レッスン
2012年、小学校2年生のとき「佐渡裕とスーパーキッズ・オーケストラ」に最年少で参加し、東日本大震災の被災地に行きました。当時、被災地はまだ建物がなく、ただ雑草の生えた空き地が広がっており、バスで通る道の横には、バスよりも高くがれきが積まれていました。私たちは被災地を7カ所訪問して演奏しました。演奏後に被災された方が「地震後、泣くことすらできなかったけれど、演奏を聴いて初めて涙が出ました。ありがとう」と言ってくださいました。その時、音楽は人の心の支えになる力があると強く感じて、ずっと音楽を続けていきたいと思いました。
6歳のとき「チェロ・コングレス・イン・ジャパン2011」で、初めて山崎伸子先生の演奏を聴いて、「いつか絶対に山崎先生に習いたい」と思いました。山崎先生のレッスンで一番印象に残っているのは、いつも言われている「イメージを持ってから音を出す」という言葉です。イメージのない音(何となく弾く音)を出さないという事は難しく、私にとって一生のテーマになると思います。山崎先生の音色はまさにすべての音に先生の想いがあります。先生の音色の多彩さには、いつも感動します。そんな先生の音をたくさんレッスンで聴かせていただけるので、レッスンがとても楽しく、幸せな時間です。
影響を受けた音楽家
私は海外から来られたチェリストなど、世界で活躍される音楽家のコンサートへ行くと、サイン会などで「将来チェリストになりたいと思っています。アドバイスをください」とお願いすることにしています。すると、皆さん共通に言われることが「Love music.」という言葉です。そして、最も忘れられないのは、憧れのヨーヨー・マさんに「自分にしかない音を持つチェリストになるには、どうすればいいですか」とお聞きした時に、「すべての自然の営みに耳を傾けなさい。そうすれば、そこから自分の音が見つかります。そして、学び続けなさい」と言われたことです。
私はこの言葉を、音楽と向き合う時にとても大切にしています。
今後チャレンジしたいこと、将来の夢
私は、自分にしかない音を持つチェリスト、そして、音楽の喜びと幸せを世界中の人達と分かち合える音楽家になりたいと思っています。そのために、今しかできない経験を大切にしながら、勉強に励み、表現の幅を広げて、より多くの人達に伝えていきたいです。
近い将来ヨーロッパに留学したいと考えています。ヨーロッパの自然、文化、言語、歴史、人々の生活を知ることで、これまで頭で想像していたことを、肌で感じ、新しい発見もして、どんどん豊かで深い表現ができるようになりたいです。そして、世界中の人々と心を開いて交流していきたいです。そしていつか、五嶋みどりさんの「ミュージック・シェアリング」のような活動に参加して、音楽の素晴らしさを世界中に広げて、世界を平和にしたいです!
第13回 はじめてのクラシック2019
~中学生・高校生のために~
【日時】
2019年7月22日(月) 14:00開演
2019年7月23日(火) 14:00開演【会場】サントリーホール 大ホール
【出演】
指揮:小林研一郎
チェロ:北村陽
東京交響楽団
【曲目】
チャイコフスキー:
オペラ『エフゲニー・オネーギン』より「ポロネーズ」
組曲『くるみ割り人形』 Op.71aより
バレエ音楽『白鳥の湖』 Op.20より
ロココ風の主題による変奏曲 イ長調 Op.33
祝典序曲『1812年』 Op.49
【料金】
指定1,000円 (6月10日一般発売)
【お問い合わせ】
メイコーポレーション
03-3584-1951