気鋭のジャズピアニストとして注目を浴びる武本和大さん。ジャズベーシスト井上陽介さんのトリオに参加したアルバム『New Stories』が2019年1月に発売となり、6月まで全国で発売記念ライブを展開中。「ヤマハ音楽教室」のOBであり、ヤマハエレクトーンコンクール(YEC)2012では第1位に輝いている武本さんに、音楽との出会いからこれまでの活動、そしてこれからの目標などをうかがいました。
井上陽介さんのトリオに参加されていますが、3人しかメンバーがいないピアノトリオスタイルでの“ピアノ担当”、プレッシャーはかかりませんか?
国立音楽大学ジャズ専修時代に師事した井上陽介さんと、素晴らしいドラマーである濱田省吾さん。このお二人と演奏しているということだけでプレッシャーです(笑)。憧れの陽介さんのトリオに参加させていただくことになり夢のようだと思っていましたが、レコーディング前のリハーサルは2、3回、レコーディングも2テイクまで、2日間で全曲録り終わるというプロの現場をいきなり経験しました。初めてのことも多かったのですが、自由に自分らしく演奏ができ本当に幸せでした。
アルバムの聴きどころを教えてください
コール・アンド・レスポンスが題材になっていますので、3人の音楽での会話を楽しんでほしいですね。タイトル曲『New Stories』や、スタンダードナンバー『Stella by Starlight』はピアノの弾き応えもすごかったので、楽しんで聴いていただけると思います。また、僕のオリジナル曲『Dear Daddy』もぜひ。実は大の陽介さんファンで、トリオへの参加を誰よりも喜んでくれていた父が、レコーディングの1週間前に急に亡くなってしまったんです。父への感謝と未来への決意を込めたバラードになっていますので、聴いていただけるとうれしいです。
音楽との出会い、音楽教室の思い出は?
3歳の頃、母に連れていってもらった近所の楽器店で、3、4歳上の子のものすごくかっこいい演奏を見て、「すごい! 僕もこれを絶対にやりたい!」とすぐに習わせてもらいました。幼児科から上級のコースに進み、憧れのその先輩を追いかけ、できれば追い越したいという思いで夢中になって練習しました。コンクールと、ジュニアオリジナルコンサート(JOC)にも小学校2年生から参加し、曲も創るようになりました。ジャズは特に聴く能力が必要になるんですが、ヤマハのカリキュラムで耳をかなり育ててもらったと思います。耳コピーや即興も、当時は辛くて泣きながらやっていたこともありましたけど(笑)、本当にやっておいてよかったと、今になって思います。
高校2年生でYEC2012の第1位を獲得されていますが、ピアノとジャズにはいつ出会ったのでしょうか?
YEC2012のあとで進路に悩んでいたとき、以前から好きで弾いていたジャズに、ピアノで向き合ってみることにしたんです。師事していた塩谷哲さんのソロコンサートに行ったら、シークレットゲストとして小曽根真さんも登場されて、2台ピアノでのジャズの演奏のすごさに鳥肌がたつほど感動し、本格的にピアノにシフトチェンジ、国立音大に進学しジャズを志しました。エレクトーンからピアノへと楽器は変わりましたが、音楽に出会った3歳の頃から、僕には音楽の道以外は見えていなかった。地べたを這いずってでも音楽で…という気持ちはずっと持っているんです。
曲はどうやって創られているんですか?
実は、僕はすごく曲創りに時間がかかるタイプ。浮かんだメロディーを書き留めて、どういう曲になるのかをゆっくり探していきます。1曲に1年かけたこともあります。不思議なのはメロディーが浮かぶ場所は、お風呂や、寝ているときが多いんですよ(笑)。お風呂のときは慌てて体を洗って飛び出して、スマホに歌で吹き込みますし、夜中に起き出してピアノを弾きに行くこともよくあります。
これからの目標は
世界に通用するピアニストになりたいです。海外での活動も視野に入れて、準備を進めていきたいと思います。ソロももちろんですが、セッションが大好きなので、世界のトップミュージシャンと共演することも目標です。
最後に、音楽を学ぶ子どもたちへメッセージをお願いします
自分もそうでしたが、音楽をやっている限り、ステップアップするときには必ず壁に当たるんです。そんなときに自分がどうしたいのか、何をやりたいのかを考えることが一番大切。先生やご両親など、たくさんアドバイスをくださると思うんですが、最後は自分が目標を持っているかどうか。いつも目標を持っていることが大事です! それから、生演奏を聴くことも絶対に必要。ミュージシャンたちが生み出す、生の空気感や呼吸感を肌で感じると、演奏に出てくるものがきっと変わるはずです。
現在23歳の武本さん。小さな頃からヤマハで育ち、数々のイベントに出演されていた時の笑顔のまま、プロのミュージシャンとしての姿勢を、言葉の端々に音楽愛を溢れさせながら語ってくださいました。これからのますますの活躍に期待しましょう!
武本さんが活動している「KKJトリオ」の演奏動画がご覧いただけます。
井上陽介ピアノトリオCD『New Stories』発売記念 ライブスケジュール
◇4月
2日、3日 大阪ミスターケリーズ
4日 名古屋ラブリー
17日 静岡ライフタイム
18日 厚木キャビン
◇5月
14日 金沢もっきりや
15日 新潟モンクスムード
16日 仙台モンドボンゴ
17日 福島Club EX
18日 盛岡スペインクラブ
<プロフィール>
1995年生まれ、3歳からヤマハ音楽教室に通い、エレクトーンに親しむ。コンクールに挑戦し、上位入賞多数。中学校2年生からジュニアエレクトーンフェスティバル全日本大会で3年連続金賞受賞、高校2年生(17歳)でYEC第1位を獲得した。その後ピアノへ転向、国立音楽大学演奏・創作学科ジャズ専修で井上陽介、小曽根真、塩谷哲、宮本貴奈の各氏に師事。2018年同校を首席で卒業した。同年、井上陽介のピアノトリオメンバーに抜擢され、2019年1月にアルバムをリリース、現在全国ツアーの真っ最中。一方で2018年は東北楽天ゴールデンイーグルスの野球試合を全編エレクトーンの生演奏で盛り上げたり(現在もホーム試合中には武本の演奏録音が使用されている)、社交ダンスのミュージカル『ダンス・ウィズ・ミー』の音楽を担当したりと、活動の幅は広い。これからの進化と活躍が楽しみな気鋭のジャズピアニスト/作・編曲家。