第12回チャイコフスキー国際コンクール ピアノ部門で、女性としてまた、日本人として史上初めての第1位獲得から18年。日本を代表するピアニストとして活躍を続けている上原彩子さん。2020年1月22日に、モーツァルトとチャイコフスキーの作品から選りすぐりの曲を集めたアルバムをリリースし、3月25日(水)には東京オペラシティ コンサートホール(東京都新宿区)でのリサイタルも予定されています。また、6月14日(日)に開催される「ヤマハ・ガラ・コンサート2020」への出演も決定しました。
2022年のデビュー20周年を前に精力的に活躍されている上原さんに、アルバムにこめた思いや、リサイタル、今後の活動についてお話をうかがいました。
今回のアルバムでは、モーツァルトとチャイコフスキーを収録されていますね
二人は生まれた国や時代など違う部分も多いのですが、音楽的にはどちらもシンプルでとても魅力を感じます。また二人ともオペラの影響を受けていて、オペラを作ることに情熱を傾けていたという共通点もあり、とてもよい組み合わせだと思いました。チャイコフスキーがモーツァルトの音楽をとても愛していたことも興味深いです。
それぞれの作曲家の作品について、どのような印象をお持ちですか
モーツァルトの作品には30代になってから集中的に取り組むようになり、自分の音楽の幅を広げるために勉強を重ねてきました。モーツァルトの時代に使われていたピアノはチェンバロからピアノへと移る時期だったこともあり、現代のピアノとは違い音量も弱くデリケートだったんですね。そうした楽器の特性だったからこそ表現できることがモーツァルトの音楽の中に詰め込まれていると感じています。
チャイコフスキーの音楽は、ピアノ曲であってもオーケストラのサウンドとして聴こえてくるようなイメージがあります。
アルバムの聴きどころを教えてください
アルバムの前半と後半でモーツァルトを弾き、その間にチャイコフスキーをサンドイッチのように挟むといった構成になっています。曲順によっても印象が変わるので、それぞれの曲がどう影響しあっているかを楽しんで聴いていただきたいですね。
3月のリサイタルでもこの二人の作曲家の作品をお弾きになりますね。アルバムとリサイタル、それぞれの選曲はどのように決められるのでしょうか
アルバムは、お一人で、またはご家族など比較的少人数で聴かれることが多いのかなと想像します。それを前提に、聴いてくださる方に個人的に語りかけられるような曲を選びました。コンサートは大きな会場で大勢のお客さまの前で演奏するので、音とともに私の気持ちやエネルギーを皆さんに向けて発信できるような曲を選ぶようにしています。
6月に行われる「ヤマハ・ガラ・コンサート2020」では、ヤマハ音楽教室出身の三ツ橋敬子さん(指揮)と共演されますね
三ツ橋さんとは2回目の共演になりますが、今回も楽しみにしています。
コンサートでは、ラフマニノフのコンチェルト第2番を弾きます。これはコンチェルトの中でもよく弾く曲で、30代になってから特に多く弾いています。ピアノが華やかでインパクトがありますが、全体としてはオーケストラがあってこそ成り立つ部分も大きく、ピアノとオーケストラの双方によって創り上げる壮大な世界を聴いていただきたいです。
現在、東京藝術大学音楽学部早期教育リサーチセンター准教授として指導にあたられていますね
専門的にピアノを勉強する中学生に指導しています。北海道や九州などから通ってくる子もいて、とてもやりがいを感じます。同じような境遇の仲間と出会い、お互いが良い刺激を受けているのではないでしょうか。生徒たちが楽しそうにしているのを見ていると、私もヤマハマスタークラスで素晴らしい友達に出会ってお互いに切磋琢磨していた頃の自分の姿も重なって感慨深いです。
3歳児のコースからヤマハ音楽教室に、1990年よりヤマハマスタークラスに在籍。ヴェラ・ゴルノスタエヴァ、江口文子、浦壁信二各氏に師事。
第12回チャイコフスキー国際コンクール ピアノ部門において、女性としてまた、日本人として史上初めての第一位を獲得。第18回新日鉄音楽賞フレッシュアーティスト賞受賞。
これまでに国内外での演奏活動を行ない、ヤノフスキ、ノセダ、ルイジ、ラザレフ、ブラビンス、ペトレンコ、小澤征爾、小林研一郎、飯森範親、各氏等の指揮のもと、国内外のオーケストラのソリストとしての共演も多い。
2004年12月にはデュトワ指揮NHK交響楽団と共演し、2004年度ベスト・ソリストに選ばれた。CDはEMIクラシックスから3枚がワールドワイドで発売された他、キングレコードに移籍し、「上原彩子のくるみ割り人形」「ラフマニノフ13の前奏曲」「上原彩子のモーツァルト&チャイコフスキー」がリリースされている。
東京藝術大学音楽学部 早期教育リサーチセンター准教授。
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