馬場 みさき
ショパン/ワルツ Op70-2 ノクターン Op.9-2
ショスタコーヴィチ/ピアノソナタ第1番 Op.12
「人生に実にかけがえのないものをヴェラ先生から与えてもらった」と語る馬場。ヴェラ氏がいちばん最初に与えてくれたショパンの作品の『ワルツ』は流麗に、繊細なニュアンス表現の手厚い指導を受けたという『ノクターン』では成熟した落ち着きのある優雅さを感じさせた。ショスタコーヴィチの『ソナタ』では濃厚なハーモニー、流麗で細やかなフレーズなど、斬新でダイナミックな構成を大胆かつ丁寧に表現し、作曲家が音楽に込めた感情までもを表す豊かな演奏となった。
上原 彩子
チャイコフスキー/グランドソナタ Op.37
16歳の頃に初めてこの曲に取り組んだ上原。レッスンでヴェラ氏が聴かせてくれた「柔らかいのに強い音」の記憶は今も鮮やかに身体に残り、自身がピアノを続けていく上でのバイブルになっているという。エネルギッシュで大胆な表現で観客を惹きつけた第1楽章、一つ一つのハーモニーを多彩な表情で響かせた第2楽章、アクセントの効いたフレーズが心地よい第3楽章と、楽曲の魅力が余すことなく伝える熱演が続く。
最終楽章ではオーケストラのように、巧みに音色やニュアンスを変化させ、『グランドソナタ』のフィナーレにふさわしく存在感たっぷりの演奏で幕を閉じた。
1929年モスクワ生まれ。
モスクワ音楽院でゲンリヒ・ネイガウス教授に師事。プラハ国際ピアノコンクールで優勝。数多くのコンサートを行い、名録音を残している。1971年国立モスクワ音楽院ピアノ科教授に就任し、イーヴォ・ポゴレリッチ、ディーナ・ヨッフェ他、多くの著名ピアニストを育てる。また、ショパン国際ピアノコンクールをはじめ、多くの国際コンクールで審査員を務めた。
1990年2月に初来日。ヤマハマスタークラスにおいてレッスンを行い、三浦友理枝が「第3回ゲッティンゲン国際ショパンコンクール」第1位 /「第3回マリエンバート国際ショパンコンクール」第1位、上原彩子が「第12回チャイコフスキー国際コンクール/ピアノ部門」第1位 等、大きな成果をあげている。
2015年1月逝去。
文:森 真奈美