研究活動支援対象者の活動レポート

最新の触覚理論に基づくピアノ演奏技能の解明名古屋工業大学大学院工学研究科機能工学専攻 佐野明人 教授 インタビュー2010年06月22日 取材

名古屋工業大学大学院工学研究科機能工学専攻に所属し、学生に向けてロボット工学を教えつつ、研究者としてモーターやセンサーを一切持たないロボットを作成し、連続歩行時間13時間45分という記録でギネス認定を取得しておられる佐野明人教授(以下、佐野教授)。そんな佐野教授の研究「最新の触覚理論に基づくピアノ演奏技能の解明」が、2009年度研究活動支援の対象になりました。今回は、その内容について、愛知県名古屋市昭和区にある名古屋工業大学の一室で、佐野教授にお話をお聞きしました。

「ピアノタッチ」をつかさどる、触覚とピアノの関係性について探求したい

ロボット工学の分野において、触覚は重要な研究分野です。特に昨今では、人間を中心としてロボットを考える人間中心型ロボット工学(ヒューマンセンタードロボティクス)が盛んに叫ばれており、佐野教授も「人に優しいロボット」や「消費エネルギーを限りなく抑えたロボット」、「人間との親和性が高い触覚センサーを持ったロボット」などの研究を進めておられます。そうした研究を進めていく上で、日常生活のどの行動よりも繊細な指の動きが必要なピアノに着目したのだといいます。

佐野: ピアノを演奏するには、長い間練習を積んで繊細な技能を身に付ける必要があります。すぐに身に付けることはできませんし、プロになるとさらに一段上の技能が必要になります。このことは、私の専門分野である触覚を使った技能と相通ずるものがあり、探求心をかき立てたというわけです。

また先日、アメリカで行なわれた国際ピアノコンクールで優勝した盲目のピアニスト、辻井伸行さんの活躍を見て、ピアノは触覚との結び付きが非常に強いという認識を強くしました。あれだけの才能を身に付けて演奏できるということは、聴覚はもちろん触覚との関係性は非常に大きいと考えたのです。

佐野明人 教授

また、これまで触覚とピアノを結び付けたテーマで研究が進められている例がほとんどありませんでした。このことも、佐野教授にとって、強いきっかけになったといいます。

佐野: 「ピアノタッチ」というくらいですから、触覚とピアノを結び付けた研究はこれまでにも盛んに行なわれているのかと思っていました。ですから、これまでそういった研究はほとんどないと聞いて、私はとても驚いたくらいです。

腕や指の運動機能的な分野とピアノを結び付けた研究は、これまでにもいくつかあったそうですが、私の専門であるロボット工学にも腕や指先に関する研究が多い。そこで、われわれは指先の触感といいますか、人間の指に近づけた人工指を使って、少し風変わりな観点で研究に臨むことにしました。