エレクトーンによる新たな音楽の創造を目指し、1964年にスタートしたエレクトーンコンクール。50年以上の歴史の中で、さまざまに形態や部門を変え、現在のヤマハエレクトーンコンクール(YEC)として開催されるようになったのは2005年から。音楽ジャンルにとらわれない、個性的で魅力あふれる新しい音楽を追求し、多くの聴衆に感動を与えられる演奏家の輩出を目指して展開し、エレクトーンを学ぶ人にとっての最高峰のコンクールとなっています。
そんなYEC2016の最終ステージ「ファイナル」を、2017年1月29日(日)、日経ホール(東京都千代田区)で開催。前日のセミファイナルから2日間にわたり、熱演が繰り広げられました。セミファイナルのステージには、国内で行われた11月の一次選考会、12月の二次選考会を経て選ばれた9名と、海外エレクトーンイベントから選考された3名の、合計12名が出場。今回は12名全員が学生というすがすがしい顔ぶれとなり、自由曲・課題編曲各1曲の審査の結果、6名がファイナルのステージへ駒を進めました。
ファイナルのステージは30分以内のソロリサイタル形式で審査が行われます。オリジナル2曲以上を含む4曲以上で構成することが規定で、それぞれが渾身のプログラムで挑みました。
審査の結果、3年ぶりの第1位(過去2回第1位該当者なし)に選ばれたのは三重県四日市市の高校生、山﨑雅也さん。1曲の中にさまざまな音楽要素が盛り込まれた、ジャンルの枠にはまらない個性的なオリジナル曲で惹きつけました。第2位は前回第3位の兵庫県川西市の大学生、森田和弥さんが順位を上げて受賞。勢いのあるグルーヴたっぷりの演奏が持ち味。楽器との一体感、抜け感のある音楽が爽快でした。第3位も高校生、青森県八戸市の川上天馬さん。ジャズやフュージョン、ミクスチャーサウンドなど、しなやかな音楽性を感じさせ、客席から多くの共感を得ていました。
第1位 山﨑雅也さん コメント
エレクトーンだからこそできることを考え、ジャンルのカテゴライズができないような、新しい音楽、新しいアプローチにチャレンジしたコンクールでした。不安で自分との闘いの日々でしたが、認められてすごくうれしいです。コンクールには自分が成長できているかの確認もあり、毎年挑戦。4月から音大生になるので、演奏技術を高めながら、より幅を広げて勉強をしていきたいと思っています。将来はエレクトーンを弾く人であり、書き手でもある「二足の草鞋」となることが理想。いただいた賞金は機材や楽譜など、そのための音楽の勉強に、しっかり吟味して大切に使わせていただきます。
第2位 森田和弥さん コメント
昨年のYECが終わってすぐ、今大会を目指しました。ファイナルの翌日には曲を書き始めたくらい(笑)。今日の反省点はいろいろありますが、「楽しめ度」で言ったら、最初から最後まで、1秒も欠けることなく他の誰よりも楽しんで演奏できたと思います。エレクトーンが大好きですから、いろんな活動を通して、エレクトーンの魅力を伝えていきたいです。
第3位 川上天馬さん コメント
エレクトーンは自分を表現することができるので大好き。スランプの時期もありましたが、今回受賞ができ、挑戦し続けてきてよかったと思います。夢はプレイヤーになること、そしてファンであるフィギュアスケートの羽生結弦選手に、僕の作った曲で滑ってもらうこと。いただいた賞金は、約束していたとおり、お世話になった先生方と「叙々苑の焼肉」!
表彰式では審査結果の発表に先立ち、審査員各氏より「これまでにない新しい風を感じられた」「将来有望な人材の登場を嬉しく思う」と素晴らしい演奏に対する称賛が、これまでの努力に対する労いとともに贈られました。
また同時に、「基礎をしっかりと勉強することにより、新しいものが別方向から発見できるようになるのでは」「音楽要素を詰め込みすぎず、音楽の核を届けるための引き算も大切に」「勝つために難解な曲を選ぶのではなく、好きな曲、伝わる曲をみつけてほしい」といった、今後に生きる胸に響くアドバイスも。これらの言葉は出場者だけでなく、来年以降コンクールに挑戦する人をはじめとするエレクトーンを弾くすべての人の指針になるものでした。
YECは2017からまた新たな枠組みで開催。新たなステージで、どんな音楽が誕生するか…今から期待したいと思います。
※「YEC2016」の審査講評は2月下旬、ファイナリスト演奏動画(抜粋)は3月に、「YECオフィシャルサイト」http://www.yamaha-mf.or.jp/el-con/yec2016/award/ にて公開予定です。