中学生までのピアノ学習者の研鑽、および若いピアニストの育成の場として展開している「ヤマハジュニアピアノコンクール」。第2回となる今年は2017年7月25日(火)、26日(水)の両日、紀尾井ホール(東京都千代田区)を舞台にグランドファイナルを開催しました。
全国6エリアでのエリアファイナルを通過した38名が課題曲、編曲課題、自選曲の演奏を披露し、出場者の年齢別にB、C、D各部門の入賞者がそれぞれ決定しました(A部門はエリアファイナルが最終審査)。受賞結果の詳細はこちら。
各部門で第1位を受賞した3名の喜びの声と、主な審査員のコメントをご紹介します。
B部門第1位 五味 結子さん 11歳

紀尾井ホールで演奏することが夢だったので今日はとても楽しく演奏できました。
課題編曲の『夢路より』はジャズの雰囲気を出して弾きたいと思い、途中からアップテンポで華やかになるようにアレンジしました。自選曲の『風の精』は風の神様をイメージして美しく柔らかい表現を目標にしました。ペダルの使い方を先生に相談して本番前に直すなど大変なこともありましたが、乗り切ることができてよかったです。小さい頃からヤマハに通ってピアノが大好きになり、いつも楽しくレッスンしてきました。これからもたくさん練習して楽しみながら続けていきたいです。
C部門第1位 田中 心優さん 11歳

受賞できてとても嬉しいです。モーツァルトのソナタは遊んだり散歩をしたり、友達と楽しく過ごしているいろいろな場面をイメージして演奏しました。課題編曲の『ムーンリバー』は映画のDVDを観てどんな場面で歌われるのかを参考にしながら、きれいなメロディーが美しく聴こえるようなアレンジを考えました。自選曲は曲の途中でいろいろな表情に変わる起伏の激しいところが気に入ってパガニーニを選びましたが、生き生きと弾けたと思っています。自分に合う曲をこれからもたくさん弾いてもっと上達したいです。
D部門第1位 信貴 美乃里さん 15歳

このコンクールにエントリーできる最後の年齢なので最高の演奏として仕上げることを目標にしてきました。課題編曲の『アメージンググレース』は全音階を使いドビュッシーのような雰囲気を意識してアレンジしました。自選曲はラフマニノフが作品にこめたいろいろな表現の要素を豊かに弾けるように、たとえば休符を単に休みではなく「音程のない音符」と解釈して間を大切に扱うなど、研究を重ねながら練習しました。1位という素晴らしい評価をいただき感激しています。今後もたくさんのジャンルの音楽に触れてさらに成長できるように努力したいです。
審査員のコメント

左から、青柳晋氏、今峰由香氏、上原彩子氏、パスカル・ドゥヴァイヨン氏、
松居慶子氏、山田武彦氏、ラルフ・ナットケンパー氏
青柳 晋氏(ピアニスト、東京芸術大学准教授)
現代の社会ではどんな事柄にもマニュアルが存在し、そこに記されたルールに沿って進めて行けば一応のことは成り立つ世の中になっています。それはとても便利なのですが、マニュアルどおりにはいかない時の対応力や発想の豊かさを忘れてはいけないと思います。楽譜を音楽のマニュアルとして扱うのではなく、作曲家がどんな思いでそれを記したのか、豊かな想像力や感性をもって音符や記号にこめられたメッセージを読み取ってください。ますます成長した皆さんとまたどこかで触れ合える機会があれば嬉しいです。
ラルフ・ナットケンパー氏 (ピアニスト、ハンブルク音楽大学教授)
参加者の皆さんを支えてくださった先生方、ご家族にお礼を申し上げます。こうしたコンクールは学んだことを全て出しきるための集中力が必要であり、今回のエントリーをきっかけに皆さんのモチベーションが確実に向上したでしょう。これからも音楽を続けて行く上でピアノだけでなく他の楽器やオペラ、オーケストラなどにも興味を持って接し、どんどん視野を広げてください。作曲家の考えや時代についても学び、豊かな気持ちで音楽に接していくことを目標にしていきましょう。
今峰 由香氏(ピアニスト、ミュンヘン国立音楽大学教授)
参加された皆さんそれぞれに良いところがあり、素晴らしい演奏でした。目に見える形での結果のみに左右されず、いろいろなことに興味を持って豊かな感覚を身につけてこれからも音楽を楽しんでください。いま私はドイツでいろいろな国の学生に指導する立場ですが、日本で勉強する人達の印象として、成長とともに音楽もルックスもみんな何となく似たような感じになってしまう、という傾向がある気がします。他の人との違いや個性をアピールすることを恐れずに、自信をもって自分の表現や音楽性を高めていってください。

B部門受賞者(左から、長屋卓弥さん、小西杏さん、五味結子さん、安形凪葵さん、中筋舞美さん、吉田乙葉さん)

C部門受賞者(左から、甲斐伊呂葉さん、田中心優さん、佐藤滉海さん、森川颯太さん)

D部門受賞者(左から、島村崇弘さん、信貴美乃里さん、土屋芽愛さん、鈴木こはるマケナさん)
第2回ヤマハジュニアピアノコンクールグランドファイナルの審査員コメントは8月末に、第3回概要は9月初旬にオフィシャルサイトへ掲載予定です。>>> http://www.yamaha-mf.or.jp/yjpc/