
1988年にM.ロストロポーヴィチ氏の提唱により、特に優れた才能や資質を持つ生徒を対象に、高い目標を達成するために必要な環境や演奏力向上の機会を提供することを目的に開設された「ヤマハマスタークラス」。ここで世界的な指導者のもとに研鑽を積んだ生徒たちは、国際コンクールで優勝するなど音楽家として数多く羽ばたき、社会的にも高い評価を受けています。この「ヤマハマスタークラス ピアノ特別コース」で学ぶ5名によるコンサートが、4月7日(日)にヤマハホール(東京都中央区)で行われました。ピアニストとしての将来性に富んだ魅力を放つ5人の演奏が、次々と披露されていきました。
コンサートは今回出演の最年少、小林真優さん(12歳)の演奏から始まりました。演奏曲はハイドンの『ソナタ第38番 ヘ長調 Hob.XVI:23 作品13-3』で、明るい1楽章に始まり、優しさ溢れる2楽章、そしてハイドンのユーモアある遊び心を楽しむような3楽章を軽快に奏でました。伸びやかな演奏姿がとても印象に残ります。
続く太田朝日さん(15歳)は、ラフマニノフの『前奏曲集 作品32』より2曲と、チャイコフスキー『ドゥムカ ハ短調 作品59』を選曲。チャイコフスキーではポーランド民謡独特の重厚感と華やかさを弾き分け、ロシアの壮大な風景をしっかりと描写。細部まで描き込まれた絵画のようで、味わい深い音を楽しませてくれました。
荻原麻理子さん(16歳)が選んだのはリストの『スペイン狂詩曲 S.254 R.90』。超絶技巧で知られる名曲を情熱的に演奏しました。入り組んだ難しいリズムや速いパッセージも自分のものにしてしっかりと伝え、きらびやかさと華のある演奏で観客を魅了し続けました。ドラマティックな演奏には、2度のアンコールが起こるほどたくさんの拍手が送られました。
後半は見木虹心さん(14歳)の演奏から。チャイコフスキーの『18の小品 作品72』より、変化に富んだ楽曲を鮮やかに表現した『穏やかなおしかり』、オルゴールを表す高音を可憐に響かせた『村のこだま』、速いリズムとフレーズを凜と聴かせた『踊りの情景(トレパークへの誘い)』の3曲を、生き生きと奏でました。ピアノを歌わせるような躍動感ある演奏が、目と耳に焼き付きます。
フィナーレを飾ったのは上原悠さん(20歳)で、前衛的な作風で知られるヴェーベルンの『ピアノのための変奏曲 作品27』と、古典的な形式を好むブラームスの『ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ 変ロ長調 作品24』という、対照的とも言える2曲に挑みました。音数の決して多くはないヴェーベルン作品は、一音一音の重みを感じさせるような緊張感ある演奏で惹きつけます。ブラームスでは次々に展開される25の変奏をていねいに紡ぎ、時に力強く、かと思えばささやくような繊細な音を生み出し、濃厚に、清らかに……といくつもの表情を楽しませてくれました。最後のフーガまで約30分という大曲を見事に表現しきった上原さんにも、盛大な拍手が送られていました。
若き音楽家たちの熱演をたっぷりと堪能できた演奏会。1年に一度、研鑽の成果を余すことなく発揮した5人の演奏は、観客を終始魅力し続けるものでした。














