
M.ロストロポーヴィチ氏の提唱で1988年に開設されて以来、特に優れた才能や資質を持つ子どもたちを対象に指導を行っているヤマハマスタークラス。30年以上紡ぐ歴史の中で多数の音楽家を世に送り出し、高い評価を得ています。このマスタークラスのピアノ特別コースに在籍する7名によるコンサートが、2025年4月13日(日)、ヤマハホール(東京都中央区)で行われました。
コンサートの冒頭に登場したのは最年少である堀口奈々美さん(11歳)。スカルラッティ『ソナタ』から、3曲を演奏しました。チェンバロのために書かれた曲であることを意識してか、とても端正な音色を響かせます。明瞭な『ホ長調 K.162』や躍動感あふれる『ハ長調 K.159』など、3曲の表情の違いを、メリハリを持って聴かせてくれました。
2番手の山下さくらさん(13歳)は、ショスタコーヴィチ『3つの幻想的舞曲』でその独特の作風を味わい深く楽しませます。リラックスした表情も印象的。ハチャトゥリアン『トッカータ』では情熱的な演奏が惹き付けながら、メロディーをくっきりと浮き上がらせる立体的な演奏を披露しました。
グリーグ『抒情小曲集』から『第7集 作品62 第3曲 フランス風のセレナード』と『第8集 作品65 第6曲 トロルハウゲンの婚礼の日』を演奏したのは正木克橙さん(13歳)。ていねいに語るように生み出す音からは、ぬくもりと優しさがこぼれ落ちるよう。楽曲の持つ背景に、ともに想いを馳せる演奏となりました。
太田朝日さん(16歳)は、ラフマニノフ『絵画的練習曲 作品33』からの4曲を演奏。繊細な伴奏とそこに絡むようなメロディーで変化に富んだ『第2番 ハ長調』や、複雑な響きとドラマティックな構成の『第5番 ニ短調』など。重厚な音楽を芯のある技術で弾きあげた『第9番 嬰ハ短調』は特に深い研究のあとが感じられる演奏で、客席を魅了し、前半の最後を飾りました。
後半は小林真優さん(13歳)によるヘンデル『クラヴサン組曲 第1巻 第5番 HWV430』より『エアと変奏曲(調子のよい鍛冶屋)』から。凛々しい音色を心地良く聴かせて惹き付けます。続くショパン=リスト『6つのポーランドの歌 S.480 R145』より『第1曲 乙女の願い ト長調』では華やかな音色と可憐な表情も見せて、表現力の幅の広さも聴かせてくれました。
ショパン『スケルツォ 第1番 ロ短調 作品20』を演奏したのは見木虹心さん(15歳)。悲痛な叫びが込められた楽曲を緻密に描写します。感情移入した演奏から生まれる多彩な音色が、ホールの隅々まで響きわたりました。凛としながらもパッションを感じさせる演奏は、観客をぐっと惹き付けるものでした。
最後の演奏となったのは萩原麻理子さん(17歳)。プロコフィエフ『ソナタ 第7番「戦争ソナタ」変ロ長調 作品83』という大曲を披露しました。始まりの主題から緊張感に彩られた演奏で、鮮やかな対比を繰り広げます。変拍子である最終章では打楽器的な表現を前面に押し出し、圧倒的なエネルギーを感じさせました。ダイナミックな演奏に、会場からは感嘆の拍手が惜しみなく贈られました。
7名の演奏はとても真摯で、日頃から深く音楽と向き合っていることが感じられるものばかりでした。客席には同じ年頃のお客さまも多かったので、きっと大きな感動を与えたことでしょう。
















