優秀で意欲的な音楽学生や社会人、音楽家、研究家の活動に役立ててもらうことを目的に設立されたヤマハ音楽支援制度。5つの支援項目のうち「音楽活動支援」の対象者に、東京・銀座のヤマハホールでの演奏機会を提供しています。今年度の「音楽活動支援コンサート2015」を、さる2015年5月18日、19日の2日間にわたって開催しました。

コンサート第1夜の18日、まず第1部に登場したのは、金平夏花さんと田淵紗恵子さんによるピアノデュオ・ユニット「タブリーナ・ヒラリーナ」です。
演奏活動以外に現在講師として子どもたちに音楽の楽しさを伝えているお二人。今回のコンサートも「クラシックにくわしい人もそうでない人も、また聴いて楽しむ人も自分で演奏する人も、いろいろなお客様に楽しんでもらいたい」と考え、誰もが耳にしたことのある有名曲を中心にプログラムを組んだとのことで、なるほど、曲名だけを眺めればおなじみの曲がずらりと並びます。
しかし実際の演奏は、このデュオならではのユニークな編曲がなされたものばかり。パワフルでスピード感あふれる『トルコ行進曲』、ポップでキャッチーな編曲が楽しい『ブルクミュラー/25の練習曲より』、途中ショパンの名曲が乱入する『熊蜂の飛行』など、名曲の変貌ぶりに集まったお客様は「これがあの曲!?」と驚いた様子でした。
一方ドビュッシー『小組曲』やブラームス『ハンガリー舞曲』では日頃の練習の成果として本格的なクラシックの四手連弾を披露、この編成の持つ多彩さ、奥深さを存分に味わわせてくれました。

続いて第2部に登場したのは、リコーダーの中村栄宏さん(ピアノ:川口成彦さん)。音大出身ではなく、現在も会社勤めをしながら演奏活動を続けられているということですが、そのテクニックと音楽性は、現代を代表するリコーダー奏者/作曲家たちから絶賛され、多くの曲を献呈されているほどです。
そんな中村さんが常々考えているのは、学校教具もしくはバロック音楽の楽器という印象が強いリコーダーの、知られざる魅力を広く伝えたいということ。今回も“島国のリコーダーの現代作品”をテーマに、イギリスと日本の作曲家による近現代の作品を集め、時に抒情的な、時にノスタルジックな、時に超絶技巧を駆使した演奏で、一般に抱かれているイメージとはまた違う、新たなリコーダーの世界を見せてくれました。
また演奏の合間には、リコーダーの種類や、特殊奏法(足で孔をふさぐ、2本いっしょに吹く、歌いながら吹く等々)についての解説もあり、素晴らしい演奏とあいまって、リコーダーに対するお客様の興味と理解も深まったようでした。
翌第2夜。この日出演した2組はいずれもめずらしい編成で、個性的かつ刺激的なアンサンブルをきかせてくれました。

第1部に登場した「ホレミーロ」は、ヴァイオリン(堀内響子さん)、クラリネット(三浦こと美さん)、ピアノ(ロドリゲスありささん)からなるトリオ。普段はサロン・コンサートなどで、クラシックの有名曲や映画音楽をアレンジして演奏しているそうですが、今回ははじめてのホール・コンサートということで、この編成のために書かれた曲だけをセレクト、これまでの研鑽の成果を披露しました。 めずらしい編成だけに、プログラムには普段耳にする機会のない作品が多く並びましたが、いずれも楽器の特性を生かした興味深い曲ばかり。スタイル的にもモーツァルト時代の古典派作品から現代物まで幅広い時代の楽曲が選ばれ、お客様はそのユニークな響きに、熱心に聴き入っていました。中でも、高校時代の同級生だったという作曲家、石川潤氏の『ヴァイオリン・クラリネット・ピアノのためのソナチネ』は、初演時に失敗してしまったといういわく付きの曲。リベンジを賭けて臨んだ今回は見事大成功に終わり、客席の石川氏も大きな拍手を送っていました。

そして第2部、コンサートの最後を飾ったのはサクソフォーン(深澤智美さん)、トランペット(真野亜莉沙さん)、ピアノ(小瀧俊治さん)の「アンサンブル・トリプティク」です。大学在学中の結成から今年で7年目を迎えるというこのユニット、活動を続けていく中で演奏やアレンジ、曲の構成なども次第に納得のいくものになりつつあるということですが、その言葉どおりこの編成ならではの、華やかさと落ち着きが一体となった独特の響きをたっぷりと楽しませてくれるものでした。
また選曲も、この編成の代表曲や委嘱曲からヘンデルの『水上の音楽』まで多種多彩。とりわけ最後に演奏された、自編曲によるガーシュイン『ラプソディー・イン・ブルー』では、トリオとは思えない迫力満点のサウンドが炸裂。管楽器とピアノが醸し出すエキサイティングな演奏に、お客様は魅了され尽くしたようでした。