ヤマハ音楽支援制度「音楽奨学支援」および「研究活動支援」の2019年度対象者への認定証授与式を、2019年4月25日(木)ヤマハ音楽振興会本部(東京都目黒区)で行いました。「音楽奨学支援」は、将来音楽分野で活躍が期待できる若手音楽家・学習者12名が対象となり、「研究活動支援」は、音楽教育や音楽文化の向上・活性化に貢献する研究テーマを持つ研究1件が対象となりました。
式では、まずヤマハ音楽振興会常務理事の大池真人が登壇し、「音楽にはもっとできることがあると私たちは確信しています。その音楽に全力で取り組む皆さまを支援していきたい」と祝辞を述べたあと、一人一人に認定証を授与。その後各対象者が今後の抱負や目標を交えながら、支援対象者に選ばれた喜びを語りました。
音楽奨学支援
■佐久山 修太さん
東京藝術大学 音楽学部 器楽科4年/専攻:ピアノ
私は小学生の頃からピアニストになりたいという夢を持っていましたが、高校に入ってからは他の楽器や音楽にも興味を抱くようになり、今ではさまざまなことに精通した音楽家になるという目標を持っています。そしてこれからは、作曲や編曲の知識ももっと深めていき、活動の幅を広げていきたいと思っています。なぜなら、自分が創造するという行為は、演奏する上でも必ず役に立つと考えるからです。また今年は、室内楽を組んだりヴァイオリンを始めたりと、さらに深く音楽に関わっていくつもりです。作曲家の意図をたくさん引き出し、同時に自分ならではの解釈を、魅力と説得力を持って届けることができるような演奏家になりたいと思っています。
■島多 璃音さん
東京藝術大学 音楽学部 器楽科1年/専攻:ピアノ
最近、50歳、60歳になった時にどうなっているのかということをよく考えます。今は、現代の作曲家やすごく技巧的な作品を弾いていくということも目標としてありますが、将来歳を重ねた時には(指導者になっていたとしても演奏家であったとしても)経験で得た「深み」を生かせるような音楽家になりたいと思います。近年はITやAIの進歩で世の中が大きく変化していますが、それに対抗できるのが、そういう人間的な深みではないでしょうか。人工的なものが増えていくこれからの世界で、人間として何ができるか。そんなことを見据えながらこれから音楽と接していきたいと思っています。
■西本 裕矢さん
東京藝術大学 音楽学部附属 音楽高等学校2年/専攻:ピアノ
この度は採用してくださりありがとうございます。今後は国内外の音楽セミナーの受講、留学のための語学学習などさまざまな学びや挑戦をしていきたいと考えています。楽曲分析や、研究書を用いたアナリーゼを行い専門的な知識も身につけていきたいです。奨学生としての自覚を持ち、綿密に計画を立て、1つずつ目標を達成していくことで、社会に通用する人間性も養いたいです。常に謙虚な姿勢で音楽に向き合ってまいります。
■江崎 萌子さん(授与式は欠席)
ライプツィヒ・メンデルスゾーン演劇音楽大学 演奏家課程1年/専攻:ピアノ
私は6年間住んだパリを離れ、昨秋よりドイツ・ライプツィヒに移りました。ライプツィヒは静かな街で勉学に集中できる環境が整っていると同時に、多くの芸術家が過ごした息吹に溢れ、またベルリン、ドレスデン、ワイマールなどの他の主要な都市へも一時間圏内です。私の中には、作曲家の残した作品に心惹かれ、その感動をどうにか共有したいという願いが第一にあります。この願いを原動力に、音楽と聴いてくださる方々をつなぎ、心を通い合わせることのできる演奏家になりたいと思います。そのためにご支援をいただき挑戦を続けられることに感謝いたします。長い人生の中で自らに人間万事塞翁が馬と言い聞かせ、多方面から美意識を磨くことに努め、日々学び続けてまいります。
■山本 英さん
東京藝術大学 音楽学部 器楽科3年/専攻:フルート
昨年成人を迎えたのですが、それまでの人生を振り返ってみて、改めてたくさんのまわりの方々に支えられて音楽を続けてこられたのだなと感じました。これから先、ずっと音楽を続けていくのは決して簡単なことではないと思いますが、奨学生に選んでいただいたことで、音楽に集中できることに心から感謝いたします。これからも向上心を常に持ち、真摯に音楽に向き合い、唯一無二の音楽家を目指したいと思っています。
■辻 純佳さん
東京藝術大学 音楽学部 器楽科3年/専攻:ヴァイオリン
大学生になりこの2年間、社会の中での音楽の存在意義や、自分にできることは何かということを改めて考えるようになりました。特に、昨年うかがった特別支援学校でのある女の子との出会いは、私のこれからの音楽人生を方向づける1つのきっかけとなりました。今回奨学生に選んでいただき、身の引き締まる思いです。奨学生としての自覚を持ち、今まで以上にさまざまなことに関心を持って勉強していきたいと考えています。これからも将来の夢に向かえる環境をいただいたことへの感謝の気持ちを忘れず、いつかは人の心に届き、記憶に残るような演奏家になれるよう努力していきたいと思います。
■佐々木 つくしさん
東京藝術大学 音楽学部 器楽科1年/専攻:ヴァイオリン
私は昨年、日本音楽コンクールで第2位をいただくことができました。今後は、海外のセミナーやコンクールに積極的に参加し、自分の音楽に反映させていきたいと思っています。以前テレビで、ベルリン・フィルのコンサート・マスターである樫本大進さんが「ノー・リスク、ノー・ファン(リスクがなければ楽しくない)」とおっしゃっていました。その言葉を私もモットーにして、さまざまなことに挑戦していきたいです。大学生になり、以前よりも自由に使える時間が増えたので、練習はもちろんのこと、演奏会や美術館などに足を運んだり、語学を勉強したり、またこれまでは一切やってこなかった家事にも挑戦し、音楽家として以上に、1人の人間として魅力ある人になれるよう頑張ります。
■黒岩 賢人さん
玉川学園 国際バカロレア(IB)クラス 中学3年/専攻:ヴァイオリン
僕は5歳からヴァイオリンを始めました。練習の大変さは想像以上でしたが、それでも今は音楽の道を選んでよかったと思っています。将来の夢は、世界に通用するヴァイオリニストになることです。テクニックを磨き、いろいろな経験を積んで作曲家に共感し、僕だけの音色で自分の音楽を奏でたいと思っています。それが聴いてくださる方の心に届き、幸せを感じてもらえたり、元気になってもらえれば本望です。今後は与えていただいた環境に感謝しながら、国内外の講習会に積極的に参加するなどして、日々努力していきたいと思います。
■小西 健太郎さん(授与式は欠席)
東京藝術大学 音楽学部附属 音楽高等学校3年/専攻:ヴァイオリン
この度支援生として選んでいただき、とても自信になり、とても嬉しく思っています。より多くの海外などの色々なセミナーに参加したり、コンクールを受けたりできることが身近に感じられるようになり、とても励みになります。本当にありがとうございます。将来、私が目標とする音楽家は、この人の演奏だからこそ!またもう一度聴いてみたいと思われる演奏家です。厳しい練習をたくさんして、自分なりの音を追求し、技術も上達することはもちろん必要ですが、音楽だけではない幅広い分野にも興味を持って、色んな感情を自然に音で表現できる音楽家になりたいです。今回のご支援、そして応援してくださる周りの方々にいつも感謝をしながら、これからも精一杯努力をして、思い描いている将来の夢を実現して行きたいです。
■坂口 璃々己さん
東京音楽大学大学院 音楽研究科修士課程器楽専攻 管打楽器研究領域1年/専攻:マリンバ
マリンバは歌やピアノに比べれば歴史も浅く認知度も高くはないですが、その豊かな世界を1人でも多くの人に知ってほしいという思いで勉強しています。日本の作曲家はマリンバのための曲をたくさん残していますし、日本製のマレットの質の良さは世界に誇れるものです。そんな日本発の素晴らしさを(計画に基づく確実な実行力や、おもてなしの心も含めて)世界に発信できるプレイヤーになりたいと思っています。最近はコンピューターで作られた音楽が増えていますが、天然木を施したマリンバの自然界の普遍的な音をもっとたくさんの人に聴いてほしいというのも私の願いです。その実現に向けて精進してまいります。
■小林 加奈さん
東京藝術大学 音楽学部 器楽科4年/専攻:オーボエ
私の夢は、ヨーロッパに留学して勉強し、現地のオーケストラに入ることです。奨学生に選んでいただいたことで、その夢が現実に近づき大変うれしく思っています。それと同時に身の引き締まる思いでもあります。私がオーボエを続けていられるのは、家族やまわりの方々のおかげです。今後は人間的な器を大きくしていって、これまでお世話になった方々に恩返しできるような人間になりたいと思っています。
■浦 秀朗さん(授与式は欠席)
バークリー音楽大学 5セメスター/専攻:作曲
私は2017年秋にバークリー音楽大学に入学し、2年半が経過しました。主に作曲について学んでいて、Composition科に属しています。Jazz Composition科を選択しなかったのはジャズだけでなくさまざまな音楽の作曲を学びたいと思ったからです。現在はよりクラシカルな内容のことを学んでいますが、新しく気付かされることが多く、有意義に過ごしています。これからはジャズ、クラシック、フュージョン、ロックなどさまざまなジャンルを融合させた音楽を作曲したいと思います。そして私は2018年春より自己のトリオを結成し、リサイタルやレコーディングを通して自作曲を演奏しています。これからはより成熟させて自分の音楽を追求できるようにしたいと思います。常に音楽に対するアンテナを張り、いろいろな作曲技法や演奏技法を学び、それを自分のものに昇華できるように今後精一杯取り組んでいきたいと思います。
研究活動支援
■林 直亨さん
東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院 教授/研究テーマ:音楽演奏と演奏習慣が脳血流量に与える影響
私の携わってきたスポーツと音楽にはいくつかの共通点があります。大変知的な活動であること。繊細な動きを必要とすること。トップになるためには恵まれた才能とたゆまぬ努力が欠かせないこと。そして、スポーツ同様音楽も健康にいいのではないか、ということです。音楽と健康というと、音楽療法がよく知られていますが、私の研究はちょっと違っていて、一般の方の健康維持増進にも音楽はよいのではないかということをテーマにしています。具体的には、音楽演奏と演奏習慣が、脳の血流や認知機能に影響を与えるという仮説を検証したいと思っております。先ほど大池常務理事から、「音楽にはもっとできることがある」というお話がありましたが、私もそう信じて今後研究活動を進めていきたいと思います。どうぞこれからもよろしくお願いいたします。