このたび、2020年度ヤマハ音楽支援制度「音楽奨学支援」および「研究活動支援」の対象者が決定しました。音楽奨学支援は5名が選ばれ、返済不要の奨学金の他、個々の状況に合わせて演奏会やレッスン受講等の機会を提供。また、研究活動支援では1件が対象となり、研究費用の一部を支援金として給付いたします。
恒例の認定証授与式は、静岡県浜松市のヤマハ株式会社本社で2020年4月に行われる予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大を防止するため中止とし、対象者の皆さまからメッセージをいただくこととなりました。ここでは、ヤマハ音楽振興会理事長・中田卓也の祝辞とあわせてご紹介します。
「音楽奨学支援」対象者コメント
荒井里桜さん
東京藝術大学/ヴァイオリン
今年の抱負は、まず留学を希望している学校の入試に無事合格することです。そして入学できたら、ひとつでも多くのことを学んで成長できるよう、自分とも音楽ともよりしっかりと向き合って勉強していきたいと思います。また、せっかく海外に行って勉強するのなら、いろいろな方とコミュニケーションを取ったり街を歩いたりして、感受性を豊かにし表現の幅を広げていけたらと思っております。さらに、現在在学中の藝大も首席卒業を目指し、海外のコンクールにも挑戦して、それを通して自分の技術や精神面での成長も図りたいです。
今回ご採用いただいたことを無駄にしないよう一心不乱に頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
藤原秀章さん
ベルリン芸術大学/チェロ
私は現在、ドイツのベルリン芸術大学で勉強しています。留学して約1年半、年齢や経済的な面から、いつまでここで勉強を続けられるのかを考えなければならない時期だったのですが、そんな時奨学生として採用していただき、もうしばらくはヨーロッパで留学生活を続けようと決心することができました。海外で音楽を勉強できるのは、本当に贅沢なことだと思っておりますが、それをご支援のおかげで実現できるのは本当に幸運で恵まれていると感じております。
これからは引き続きドイツで、世界中から集まってくる一流のアーティストたちの演奏をたくさん聴き、レッスンをたくさん受けて、トップ・レベルの学生の皆さんから刺激をもらい、自分の音色や表現の幅を広げて、多彩な演奏ができる演奏家を目指して努力を重ねていきたいと思っております。
森田啓佑さん
ザール音楽大学/チェロ
私は2019年4月にドイツのザール音楽大学に編入しました。今回奨学生に採用していただいたことで、経済的にも精神的にも安心して勉強できますことを、心より感謝申し上げます。2020年は、引き続きグスタフ・リヴィニウス先生のもとでさらなる研鑽を積むとともに、演奏会で経験を重ね、コンクールにも挑戦していきたいと思います。今後数年はヨーロッパで勉強していくつもりですが、さまざまなことを吸収し、さらに大きくなれるよう頑張ります。
新型コロナウイルスの影響で、ドイツでは3月半ばには外出禁止となりました。5月半ばから大学の授業はオンラインで、実技レッスンは対面で再開され、いろいろなことがゆっくりと動き始めています。日本の皆さまも、どうかお気をつけてお過ごしください。お会いして、演奏を聴いていただける日を楽しみに邁進してまいります。
柴田花音さん
トロント王立音楽院/チェロ
初めてヤマハ音楽振興会のホームページを拝見した時、私は、中田理事長の「ヤマハ音楽振興会は音楽の歓びを、国境や言語を超えて1人でも多くの人に伝え、感情を音楽で自由に表現できる豊かな感性を育むことによって、明るく健全な社会づくりに貢献したい」という言葉に大きな感銘を受けました。そしてそれは、私が影響を受けた世界的チェリスト、ヨーヨー・マさんの、以下の言葉にも通じるように思いました。「音楽は、お互いを理解し合うことができる1つの簡潔な方法です。そしてその音楽は、教育という側面において子どもたち同士のつながりをもたらし、思考力や感性を育みます」。
海外に生活拠点を置き始めた私は、演奏会やアンサンブルを通して、言葉が通じずとも音楽が人と人の心をつなぐという体験を日常的に多く経験できているように思います。そして、これまで音楽が私に与えてくれた喜びや感動を、音楽経験の有無にかかわらず、1人でも多くの人々に感じてほしいという思いを強く持っています。同様の信念のもとで、若手音楽家をサポートされているヤマハ音楽振興会の奨学生にしていただくことは、長年のあこがれでした。いただいたチャンスを最大限にいかし、これからもさらにたくさんの研鑽を積み、奨学生としての自覚をしっかり持ちながら、音楽家として成長したいと思います。
新田吏央さん
桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)/マリンバ
師匠である安倍圭子先生の演奏を初めて聴いた時、私はマリンバの持つ豊かな音色に感銘を受けました。私の音は、先生の音色にはまだまだほど遠いですが、心に残るような演奏を心がけ、自分の演奏を通してマリンバという楽器の魅力を国内外に広めたいと思っています。そしていつか安倍先生のように、誰かの目標になれるような人間になりたいです。そのためにまずは、今回いただけることとなった奨学金をもとに、マリンバのワールド・コンペティションに出場・入賞することを目標として練習に励んでいきたいと思っております。
「研究活動支援」対象者コメント
深町浩司さん
打楽器奏者、愛知県立芸術大学音楽学部教授
研究テーマ「打楽器演奏における指の動作と音色変化のメカニズム」
私は長年打楽器の演奏家として活動し、10年前から大学で教えるようになりました。今回支援の対象となった研究テーマは「打楽器演奏における指の動作と音色変化のメカニズム」というものです。
打楽器を演奏する時は、バチを手に持って打面に当てることが多く、その際バチの重さや当たるスピードによって音色が変わるということは、すでに科学的に証明されています。しかし私は、長年の打楽器奏者としての経験や勘から、それを操作する指の動作を変えることでも音色は変わるのではないかと考えました。それがこの研究の発端です。今後は、指のモーション・キャプチャーや筋電図を取って科学的なエビデンスを出そうと計画しております。
現在世界は新型コロナウイルス感染症の影響で厳しい状況にありますが、このような状況に負けずしっかりと研究を行い、皆さまに直接お目にかかって研究の成果をご報告できることを楽しみにしております。
ヤマハ音楽振興会 理事長・中田卓也 祝辞
このたび2020年度ヤマハ音楽支援制度の対象者となられた皆さま、誠におめでとうございます。
今回選ばれた支援対象者の皆さまは、将来の音楽活動や研究活動に対し、それぞれ目指す姿や描く夢があると思います。この支援がその夢の実現に近づく一助となることを心より望んでおりますし、皆さまの人生の大切な時期に支援できることを、大変うれしく思います。私どもヤマハ音楽振興会は、ヤマハ・グループ各社とも連携し、これからも多くの音楽学習者や研究者の方々を応援させていただくとともに、幅広く音楽文化の発展に貢献してまいりたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。