ヤマハ音楽支援制度は、優れた音楽能力を有し、将来音楽分野で活躍が期待される方への支援として「音楽奨学支援」(13歳以上~25歳以下)を実施しています。
今回は2019年度の支援対象者で、現在、玉川学園 国際バカロレア(IB)クラス 高校1年に在学中の黒岩賢人さんにお話を伺いました。
プロフィール:黒岩 賢人(クロイワ ケント)
2005年 トルコ、イスタンブール市に生まれる
2010年 5歳より桐朋学園「子供のための音楽教室」お茶の水教室にてヴァイオリンを佐々木歩氏、声楽を丹藤麻砂美氏に学び始める、後に仙川教室に移る
2013年 第3回「ハマのJACKコンチェルトソリストオーディション」カテゴリーX優勝
横浜みなとみらいホールにてNHK交響楽団メンバーを中心とした「ハマのJACKオーケストラ 」と共演
2014年 東京都港区にてジョイント・リサイタル開催
フランス、パリ市パリ地方音楽院(CRR de Paris)スペシャリゼ課程入学、スザンヌ・ゲスネール氏に師事
2016年 帰国、清水高師氏に師事
2017年 指揮者、マルコ・ボエーミ氏のマスタークラス受講。修了コンサート「マルコ・ポミーエ&仲間たち」に出演
2017年 イル・ピッコロ・ヴィオリーノ・マジコ国際ヴァイオリンコンクール(イタリア)にてセミファイナル進出、ベスト・バッハ・パルティータ賞を受賞
2018年 同コンクールでセミファイナル進出、ベスト・カンタービレ賞を受賞
金の卵たちのサロンコンサートシリーズ“夢に向かって”に出演
2019年 フィリアホール室内楽アカデミア(横浜市青葉区)受講、披露コンサート「コンセール・ドゥ・レーヴ」に出演
ベートーヴェン国際ヴァイオリンコンクール(オーストリア)17歳以下の部優勝
ナウェンチュフ国際ヴァイオリンコンクール(ポーランド)19歳以下の部3位
オランダのHaarlem Lutherse Kerkでリサイタル開催
ウィーン・フーゴ・ヴォルフ三重奏団演奏会共演(玉川学園UCHホール)
フィリアホール、室内楽「ショーケース・コンサート」に出演
玉川学園創立90周年式典に出演(横浜アリーナ)
2020年 横浜市白楽シルクサロン・コンサートシリーズに出演、北海道旭川市東川町街角コンサートに出演
2016年、2017年、2018年 ミュージックアルプ夏期国際アカデミー(フランス)に参加、
スザンヌ・ゲスネール、ルーシー・ロバート(ヴァイオリン)、ギヨーム・シュトゥル、サンジン・キム(室内楽)の各師に指導を受ける、コンサートにも出演
現在、玉川学園 国際バカロレア(IB)クラス 高校1年在学中、好きな科目は数学と社会
音楽を始めたきっかけ
3歳のころ、2歳上の兄がピアノを習っており、兄の演奏を聴き自分も音楽をしてみたいと思いました。しかし、兄とは違う楽器を弾きたかったため、ヴァイオリンを自分で両親にお願いしました。私は兄のピアノ曲を鼻歌にして、いつも兄に怒られていましたが、ヴァイオリンと同時に始めた声楽で発声法を学び、楽しくて変声期まで歌い続けました。
印象に残った経験、先生、レッスン
印象に残っている経験は、小学3年の時、NHK交響楽団メンバーを中心とした弦楽オーケストラと、バッハの『ヴァイオリン協奏曲第1番』を弾いてコンチェルトデビューしたこと、中学1、2年とイタリアのコンクールで、現地の指揮者やオーケストラと共演したこと、そして、フィリアホール室内楽アカデミアで、ベートーヴェンの『弦楽四重奏曲第4番』をチェロの海野幹雄氏をはじめプロ奏者の講師陣と勉強した事です。演奏の呼吸を合わせる楽しさに目覚めました。
先生で一番影響を受けているのは清水高師先生です。「君が上手に弾くことは僕にとってどうでもよい。もっと感情を音にしてください」と容赦なく音を追求するようにおっしゃり、自由に感情を表現できるよう、さまざまなエチュードでテクニックを鍛えてくださいます。
そして、6歳の拙い演奏のころから伴奏してくださっている、ピアニストの林絵里先生です。先生はさまざまな音楽的なことを伴奏しながら緻密に教えてくださり、常に本番で支えてくださいます。毎回厳しいレッスンの後に「本番は自由にね!」と励ましてくださいますが、なかなかこれは実現できていません。
また、フランスで師事したスザンヌ・ゲスネール先生は、エチュードを音楽的に弾かないと認めてくださいませんでした。土曜日がレッスン日だったのですが、「練習も大切だけど、週末は旅行に出かけいろいろな経験をしていらっしゃい!」とおっしゃるので驚いた思い出があります。厳しい先生でしたが、清水先生とご友人でもあり、私の成長を今でも見守ってくださっています。
影響を受けた音楽家、好きな音楽
ロシア人ヴァイオリニストのセルゲイ・クリロフ氏とは、イタリアのコンクールでバッハの『2つのヴァイオリンのための協奏曲』を一緒に演奏したのですが、音楽的に会話ができ、「通じた!」と達成感を得ました。氏も評価してくださいました。
好きな音楽は情熱的なスペイン音楽です。ラロの『スペイン交響曲』や、サラサーテの『スペイン舞曲』、ビゼーのオペラ『カルメン』のヴァイオリン用編曲などです。特に『カルメン』は変声前に声楽の先生とアリアを全てフランス語で勉強しました。まだどの有名な幻想曲も弾いていませんが、これから演奏するのが楽しみで仕方ありません。
今後チャレンジしたいこと、近い将来の夢
曲のスタイルを明確に、まず音で観客を魅了する音楽を作っていきたいです。そして、私の演奏をもう一度聴きたいと感じてもらえるようになれば最高です。
今後は、メロディーとハーモニーの関係性など作曲家それぞれの特徴、国や時代によって違う音楽の特徴などを理解し、作曲家の意図を深く読めるようになりたいです。また、音楽を別の視点から学ぶために作曲の勉強を再開したいのと、他にバロックの通奏低音や即興演奏も学びたいと思っています。そして、今後定期的にソロや室内楽の演奏の機会を持ちたいと思います。
私は音楽以外のことにも興味があり、それらを学びたかったので、とても迷いましたが普通高校進学を選びました。学業と音楽修行の両立は想像以上に大変ですが、音楽を学ぶことのできる現在の環境に心から感謝しています。
コロナが音楽業界に及ぼす影響は計り知れず、実際学生の私でさえ演奏の機会が減りましたが、目の前の、自分が今なすべき事に集中したいと思います。