大人気のゲーム「モンスターハンター」。“モンハン”の名で親しまれ、その音楽はエレクトーンの曲集にもなるほどの人気です。この「モンスターハンター」シリーズの音楽を担当する一人が、作曲家の小見山優子さん。ヤマハ音楽教室で学んでいたエレクトーン少女がゲーム音楽の作曲家になった理由や、制作秘話などをうかがいました。
音楽教室に通い始めたきっかけを教えてください
自分が通いたかったけれど叶わなかった母の想いを託された形で、自分で意識をすることなく気が付いたら通っていました。練習を積極的にするタイプではありませんでしたが、弾くのは好きだったのでJ-POPなどを楽しく弾いていました。そのうち、ドラマの曲や弟がやっていたゲームの音楽を弾くようになるんですが、ヤマハの音楽教室で耳が自然に鍛えられていたんでしょうね、原曲とキーが違うことが許せなくって(笑)。移調したり、リズムを足したり、データを直して完全再現することにはまっていきました。中学校時代には時間もあったので、朝から晩までずーっとエレクトーンに向かっていましたね。
作曲はいつから始めたんですか?
大学の入試に自作曲の演奏があって、それが初めてでした。いまだにそうですが、自分の作った曲を最初に人に聴いてもらうのって、すごく恥ずかしいんですよね。もちろん、そのとき自分にできることはすべてやりますが、自信もない。でも沖浩一先生をはじめ大学の先生方は、私の曲のモチーフを“良きもの”として聴いてくださって、生かす方法を教えてくれました。それは今でも制作の糧になっています。ゲーム音楽の道へ進んだのも、講義を受けた松田昌先生から「お前は曲はいいけど演奏が下手や」って言われたことがきっかけなんですけど(笑)。
小見山さんの代表的な曲『生命ある者へ』の制作秘話など教えてください
『生命ある者へ』は「モンスターハンター3(トライ)」のエンディングテーマなんですが、CMでもおなじみの、勇壮な『英雄の証』と対になるような、生命の源である母なる海をイメージした「3」を表現した楽曲となりました。
「モンハン」シリーズに初めて係わったのが2005年で、ブランクはあれど15年近く参加させてもらっています。悩みは、完成した作品の音楽を聴くには自分でゲームをプレイしなければならないこと。ロールプレイングの終盤の音楽は、モンスターが強くて聴きたくてもそこまでたどり着くのが大変なんですよ(笑)。
ゲーム音楽を作るときに意識していることはありますか?
ゲームの場合、絵や物語などいろいろな芸術のパーツが集まってできているので、音楽だけが目立ってはダメなんです。視覚からの情報に音楽が感情を加えてあげるような、そういう気持ちの部分を助けるツールになるよう、心がけています。
今もエレクトーンを弾かれるそうですが、エレクトーンの魅力は?
先日、息子が参加した発表会の大人の部で、「モンハン」の曲を1曲弾いてきました(笑)。エレクトーンの魅力は、すべてをプロデュースできること。子どものときに「完コピ」をしていたこともそうですが、伴奏、音色、リズムと、細部まで自分のイメージする音楽が表現できることがたまりませんでしたね。自分もそうでしたが、ゼロから曲を練習して弾けるようになることは、音楽だけでなく自信につながります。イヤだなと思っても、その練習はゼロから100に少しずつ近づいているはずですから。
5歳から「ヤマハ音楽教室」幼児科に通いエレクトーンを始める。高校時代は軽音楽部でベースやドラムなどさまざまな楽器を経験。相愛大学音楽学部創作演奏専攻に入学し、作曲、編曲、演奏を学ぶ。卒業後、カプコンに入社。「ロックマンⅩ7」メインコンポーザー、「同Ⅹ8」メインコンポーザーと音楽監修を経て、2005年発売の「モンスターハンターポータブル」から2009年発売の「モンスターハンター3(トライ)」までの音楽監修と作曲を担当する。同シリーズには2019年発売の「モンスターハンターワールド:アイスボーン」など近作にも参加。
2012年よりcomymusicとして活動を開始し、アニメ「TSUMTSUM」や、TVCM、PVなどの作曲、「FINAL FANTASY Record Keeper」アレンジなど、幅広いメディアへの音楽提供のほか、「ニコニコ闘会議2016」ではエレクトーン演奏でステージに登場するなど、多岐にわたって活躍中。ヤマハ音楽教室に通う二人の息子(小学生)の母でもある。
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