アルバム『Vocalize』で目指したのは、エレクトーンと人間が奏でる音の”ブレンド”。
エレクトーンプレイヤー、またキーボード界を代表するトップアーティスト窪田宏。2015年12月9日には11年ぶりとなるソロアルバム『Vocalize』がリリースされる。今回はニューアルバムのコンセプトや聴き所などについてうかがった。
『Vocalize』ではエレクトーンELS-02シリーズのボーカル音色が活躍
●久しぶりのソロアルバム、ファンは待ち遠しかったのではないでしょうか。
ソロとしては11年ぶりです。最近はダウンロードの音楽配信などもあって「CDという形態は今どうなんだろう」という思いもあったのですが、そうはいってもCDはアーティストとしては名刺代わりのようなもので、「今の自分」を伝えるためにも大切なのでは、という思いが強くなってきて。それで久しぶりにCDを作りました。
●レコーディングではエレクトーン ELS-02シリーズが活躍したそうですね。
ELS-02シリーズはかなり多用しました。エレクトーンは自分のひらめきに瞬時に反応してくれるし、音色の面でもかなり向上していますからね。
●ELS-02シリーズで特に気に入っている音色はなんですか。
ボーカル音色です。この音色が気に入ったので今回のアルバムでは多用しました。エレクトーンのボーカル音色はピッチが正確なのですが、そこにあえてピッチが揺れる人間のボーカルをブレンドすることで、面白い効果を出してみました。
●そのあたりが『Vocalize』というアルバムタイトルにつながっているのでしょうか。
そうなんです。ボーカライズとは「人間とコンピュータのブレンド」という意味でつけたタイトルです。エレクトーンを知ってる方ならひょっとしたら馴染みがある語感かもしれません。ELS-01シリーズを最新モデルと同等の性能にすることを「バイタライズ」って言うんですが、ちょっと言葉が似てるから覚えやすいかなって(笑)。
トッププレイヤーとエレクトーンとのコラボを楽しんでほしい
●第一線のミュージシャンとの共演も聴き所だと思います。
エレクトーンは通常ソロで演奏することが多い楽器ですが、このアルバムではエレクトーンと人間の自然なグルーブをうまく「ブレンド」したかったんです。それでまずドラムは則竹裕之さんにお願いしました。今までも一緒に演奏していますが、彼の音楽に対する真剣度は本当に素晴らしいです。例えば2曲目の『Endless Marvel』は、当初叩いてもらう予定ではなかったんです。でもドラムの録音が順調に終わったので則竹さんに「よかったらこの曲も叩いてくれない?」と頼んだら「いいですよ」って。でもそこからデモ音源のドラムをちゃんとコピーして譜面に起こし、正確にリズムを確認してから「自分はここに何が加えられるのか」を考えて叩いてくれました。そんな真面目な人なんです。もちろん僕のイメージを遥かに超える素晴らしい演奏が録れました。それと1曲目の『Vocalize』のベースのスラップソロは最初から須藤満さんに弾いてもらいたいと思っていました。デモではエレクトーンで録音しましたが、やはり鍵盤で弾くベースと名手のスラップでは全然違います。須藤さんはソロだけで30テイク以上弾いてくれました。凄い集中力でしたね。さらにギターは平井武士さん、ボーカルにはMiyukiさんに参加してもらいましたが、いずれも素晴らしい演奏をしてくれました。彼らの演奏とエレクトーンのコラボレーションを、ぜひ楽しんでほしいと思います。