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再び楽器へ向かい、クライマックスに向けて奏でるのはオリジナル曲の『Intermezzo-間想曲-』。ストリングスのグラデーションをイメージして書いた楽曲を、オルガンのグラデーションへ。自身の曲の編成を変えるのは初めてで、アレンジにあたり「3段譜で弾くために書いた曲だった」という新鮮な発見もあったとか。オルガンの音色の優しさは曲の温かさをより引き立て、揺るぎない響きは荘厳な雰囲気を作り上げる。これまでに幾度か聴く機会のあった楽曲だが、改めて曲の豊潤な力に感じ入った。
ラストは誰もが知る『ボレロ』を、「オールスター勢ぞろい」でアレンジ。エレクトーンで表現できる思いつく限りの音色――シンセサウンドから、管楽器、ロックオルガン・パイプオルガンにエレキギター、コーラスなど――をジャンルも飛び越えあれこれと詰め込んだ。変幻自在なエレクトーンの醍醐味をこれでもか!と提示したような演奏は圧巻で、客席からの拍手は当然のように鳴りやまない。応えたアンコールは『ニュー・シネマ・パラダイス』のオルガンバージョン。最後にまたひときわ心に沁み込む演奏を残して、終演となった。
語源を紐解き“「organ/道具」で、さまざまな「organism/生命と宇宙」を想像したい”と提示していた渡辺。ピンと張り詰めた心地よい静寂と緊張感も取り込んで、温かみと息吹あふれるコンサートを作り上げた。自身のリサイタルだからこそ成し得た、こだわりとわがままいっぱいのプログラムを聴けた一夜に感謝したい。
文:神田麻央