エレクトーンもオルガン! エレクトーンの両極端な二面性を提示するリサイタル
2016年2月に、大阪、東京、名古屋で「YMF ELECTONE LIVE Vol.16 渡辺睦樹リサイタル~Organism」を開催する、エレクトーンプレイヤーの渡辺睦樹さん。オルガンをキーワードにした実に8年ぶりとなるリサイタルについて、お話をうかがいました。
8年ぶり、「自分本位なプログラム」で音楽観を伝えたい
●8年ぶりのリサイタルですね。
気が付いたらあっという間に8年が経っていた、という感覚です。ふだんのコンサートでは幅広い層の方に楽しんで聴いていただける曲を前面に出してプログラムを考えますが、僕は本来、どちらかというとストイックで面倒くさい音楽が好きなんです(笑)。今回はあえて「自分本位」に、僕が興味のある音楽を集めたプログラムで臨みます。
●プログラムが早々に決まっているんですね。
実は、2年ほど前に洗足学園音楽大学でのコンサートのために組んだプログラムなんです。その1回だけのつもりでしたが、やってみたら楽しく、また意味もあるのではないかと思い、多くの人に聴いていただきたくて今回再演することにしました。
「一回ではもったいない」―再演を決めたオルガンをキーワードにしたプログラム
●エレクトーンのリサイタルで、あえて「オルガン」をテーマにされていますね。
エレクトーンもオルガンの仲間なんだからオルガンの曲を弾けばいいじゃないか、というのがまずあって(笑)。僕もふだん、自分が「オルガンを弾いている」ということを認識していないところがあるので、少し立ち戻るという意味がありました。 また、以前からの想いとして、オルガン用に人が書いた3段譜を弾いてみたかったということもあります。エレクトーンでクラシックを弾くにはどうしても編曲という作業が必要で、僕の奏者としてのフィルターを通したときに作曲者の意図から逸脱していないかという不安はいつもあるんです。鍵盤で弾くために書かれたオルガンの3段譜をそのまま演奏することは、レジストを変えてはいてもものすごく安心感があり、そして新鮮でした。
●オルガン曲のアレンジや金管楽器のための曲やオーケストラ曲のオルガンを使ったアレンジなど、いろいろなスタンスでオルガンに向き合われていますね。
『ドリア旋法のコラール』のようにオルガンひとつの色合いの音色で流れていく「オルガンの存在感」に敬意を表するような曲がある一方、オルガン曲の『シャコンヌホ短調』をオーケストラの多彩な色を乗せてアレンジするなど、エレクトーンの二面性を前面に出してみました。 オリジナル曲の『Intermezzo』はストリングスのグラデーションを意識して書いた曲ですが、これが「オルガンの音色だけで弾く」というコンセプトに似ていると気が付いて、オルガンのグラデーションでアレンジしています。自分の曲をレジストレーションだけ変えるというのも初めての経験で、面白かったですね。
●ラストの『ボレロ』も楽しみです。
実は本当にこのアレンジでいいのか、と今でもまだ迷っているところがあります(笑)。もともと色彩感がすごく強い曲なので、それを壊さず、エレクトーンのサウンドでどう表現するかはかなり神経を使い…いやなことは忘れることにしているので、紆余曲折の詳しくは覚えていないですが(笑)、時間と労力はかけた気がします。でも、エレクトーンの醍醐味はここ。楽しかったし、聴いていただきたい曲でもあります。