審査員のコメント
青柳晋氏(ピアニスト、東京芸術大学准教授)
若い学習者は難しい曲を弾くことに抵抗がなくどんな曲にも取り組むのですが、演奏するテクニックは十分でもその曲の魅力や曲についての考えなどを答えられない人が多いように思います。今の時代は大人達が楽しいことを次々と考えてくれる世の中ですが、決して受け身になってしまうことなく、常に面白い発想力を持ち続け、ぜひ自ら発信できる個性を持ってください。
ラルフ・ナットケンパー氏(ピアニスト、ハンブルク音楽大学教授)
コンクールを闘いの場にするのではなく、みんなで音楽を楽しみ、よい音楽に対する愛情があふれる、そういったきっかけになるものとして考えてほしいと思います。皆さんがそれぞれの努力を通してさらに音楽が好きになることを願っています。
上原彩子氏(ピアニスト)
これから心も身体も成長して大人になっていく時期を迎える皆さんですが、音楽もそれと一緒に成長していって欲しいですね。何を表現したいかをこれからは自分でも考えていってください。時には壁にぶつかったり、思うようにうまくいかない時もあると思いますが、そこを乗り越えていけるようにぜひ頑張ってください。
パスカル・ドゥヴァイヨン氏(ピアニスト、ベルリン芸術大学教授、英国王立音楽院客員教授)
コンクールは自分の居場所や自分の力を知るのにとても効果的なものだと思います。しかしコンクールのためだけに頑張ったり、音楽を置き去りにしてしまうのはよくありません。どんな結果が出ても、明日はもっと今の自分よりもよい自分になれるよう、前進して欲しいと思います。
音楽を学ぶにはたくさんの時間が必要です。演奏だけでなく、たとえば作曲家の生きた時代のこと、それぞれの人間性の違いなど、音楽のバックグラウンドを学ぶ「教養」も必ず必要になってきます。音楽をより知ること、自分自身を育てるために、これからもたくさんの勉強をしていきましょう。
主催者コメント
本コンクールは、ピアノを学ぶ生徒にとっての学習と研鑽の場であり、将来性ある若いピアニストの育成を目指しています。音楽ジャンルを問わないことや、課題編曲の要素が含まれるなど演奏曲の自由度や幅広さを特長としており、これからのピアノ演奏教育の指針となって欲しいと考えています。
課題曲は偏りないピアノ学習と演奏表現を求めてバロックや古典~ロマン派としています。これは多くのピアノコンクールでも考えられていることですが、本コンクールではそれに加えて自選曲(いつでも弾ける大好きな曲、自ら弾きたい曲)、アレンジ(クラシックでもポピュラーでも、伴奏者としても対応できる、将来のピアノ応用力)の要素を含めています。ピアノコンクールでフリーの演奏を取り入れるのは珍しいことだと思いますが、個性(良いところ)を伸ばして欲しいとの願いを込めた内容となっています。
今年度の出場者の演奏を聴いていて、豊かな表現力でのびのびと演奏している子どもたちが多いのが印象的でした。これからも、参加される多くの皆さんが演奏表現力を高めるとともに、演奏者として音楽の個性を育んでほしいと願っています。(ヤマハ音楽振興会 理事 永井口咲子)