前回は、幸福との関係が深いと思われる4つの因子のうち「ありがとう!(つながりと感謝)」因子において、音楽の習い事を経験した人のほうが非経験者に比べて高いという調査結果についてお話を伺いました。
第2回となる今回は、「ヤマハ音楽教室」経験者とその他の音楽系習い事の経験者を比較し、「ヤマハ音楽教室」経験者は「やってみよう!(自己実現と成長の)」因子が高いという結果が出たことについて、どのような感想を持たれたかを講師のみなさんに伺いました。相対的に、自己肯定力が強く、人生を前向きにとらえる傾向があると言えそうです。
自分の存在を誰かに認められることで 自分を肯定できるようになる
佐々木講師:
ピアノの発表会のあとで「よくできたね!」と言われた子が、「うん、よくできた」と自分で言い切ったり。日常会話の中で「今回はテストの点が悪かったけど、次は1位になれるよう頑張りたい」と言ったり。自信を積み重ねていって、努力すればできるようになることを、子どもたちには感じてもらえているのかなと思います。
細澤講師:
私の生徒にも「僕がヤマハに通って良かったのは、学校の授業でオペラを聞いたときに、すごく良いメロディーだと思って聞けたり、日常で聞こえてくる音楽を分析しながら聞けたりするところ」と話す子がいて。とにかくヤマハで得た経験が自信になっているんですよね。本人は音楽はあくまで趣味のようですが、「合唱コンクールで、思いを込めた歌い方を自信を持ってみんなに教えられるんです」と話してくれました。毎回のレッスンや発表する場の成功体験の繰り返しが、自信につながっているのかなと思います。
ヤマハ音楽研究所 所長 田山:
すぐに完成してしまったり、成功しないままくじけてしまったりするのではなく、努力をすれば成功するという積み重ねの体験が、大事なのかもしれませんね。
安立講師:
グループレッスンでは、子どもたち一人一人の持ち場があり、自分の実力を発揮できる場所があります。また、そこでうまくいけば周囲のお友だちからも、講師からも認めてもらえるようになります。自分の存在が誰かから認められることが、自分で自分を肯定できるようになることにつながっているのかなと。それは子どもたちにとって、すごく良いのかなって思います。
物事を前向きに考えている子どもが多い
安立:
グループレッスンだと、グループ内で発表したり、人前で演奏する経験が多くなります。たった一人で前に出て楽器を弾くってとてもプレッシャーがかかると思うんですが、そういう経験は日常にはなかなかないですよね。決まった日までにたくさん練習して、発表をやりきるということも自信になると思いますし。逆に、人前で失敗をしてなんとか立ち直っていくという経験も、なかなかできません。そうした経験の繰り返しで、何事も「なんとかなるさ」と考えられるようになるのかもしれません。
佐々木:
「失敗して立ち直って、やっぱりダメでもまた立ち直って、次も何かに挑戦して」ということが本当に多いですよね。
一同:
そう思います。
佐々木:
グレード試験の結果がギリギリ不合格にはならなかったという評価でも、くじけずに次の級へ挑戦し続けたり。次はコンクールで賞を取れるようにと頑張ったり。前向きな子が多いです。
細澤:
少し不器用で弾けるようになるまで時間がかかり、他の子の数倍は練習し続けている子がいるんです。その子は他にもサッカーや陸上などいっぱい掛け持ちしているんですが、それでもエレクトーンの練習を楽しみながら頑張り続けていて。なぜこんなに大変そうなのに、前向きなのだろうって思っていたんです。先ほどの話と重なりますが、ヤマハ音楽教室には大変な思いをしながらも、曲を仕上げてみんなの前で披露して、周囲に認められてという達成感を得られる環境があります。そうした積み重ねが、子どもたちを前向きにするのかなと思います。「どうしてこんなにポジティブなのだろう?」って思うような子が多い印象ですね。
ヤマハ音楽振興会 システム教育部 部長 水戸瀬:
失敗しても前を向くこと、物事を前向きにとらえることが、自分にとって良い方向につながるということを、子どもたちは自然と理解できているのかもしれませんね。
大人になっても音楽を楽しんでいる
細澤:
幼児科からヤマハに通い始め、今もずっとピアノを続けている子がいるんですが、大学生の時はピアノサークルに入りながら演奏会などいろいろな活動をしていましたし、社会人3年目になった今も、毎年発表会に出ています。思うように弾けないこともあるのですが、どうやらピアノを演奏することが癒しになっているようです。
安立:
私が担当した生徒の中で、今一番年齢が高いクラスが高校2年生です。みんな勉強に部活に大忙しですが、その子たちの話を聞いていると「高校の仲間たちと海外へ行ったときに、得意なことを発表するステージがあり、ピアノを弾いた」「文化祭でバンドのキーボードを頼まれて演奏した」「軽音部に入ってギターを頑張っている」「アコースティックギター部に入り、アンサンブルを楽しんでいる」「合唱部で歌うミュージカル曲の伴奏をするために、耳コピをしている」など。ヤマハ以外でも、これまで身に付けてきた音楽の力を生かして、音楽を楽しんでくれているんだな、と感じます。
田山:
ところで、今日ここにいらっしゃる講師のみなさんは、ヤマハ音楽教室のご出身ですか?
安立:
私と佐々木先生は、ヤマハ音楽教室の経験者です。私自身も小さい頃から「ヤマハ音楽教室」に通い、「楽しいな」と思ったり「練習や宿題が大変だ」と思ったり…。本番や試験、課題に追われて必死でやっていましたが、余裕がなかったのか楽しむ気持ちを感じられないことも、正直ありました…。でも、大人になり今は音楽を心から楽しいと思えます。限りある人生の中で、弾きたい曲、聴きたい曲、音楽で表現したい気持ちが溢れています。『何とか頑張ってきて、良かった』と思っています(笑)。
佐々木:
私もコンサート鑑賞に行ったり、年に1度は先輩・後輩の講師のみなさんとエレクトーンフェスティバルに参加してアンサンブルを楽しんだりしています。幼い頃からヤマハに通っていたヤマハ音楽院での同期の中には、趣味でブラスバンドに参加したり、ゴスペルサークルで活動している友人もいます。
水戸瀬:
みなさんのお話をうかがって、ヤマハ音楽教室が単に演奏能力だけではなく、音楽を楽しむことの大切さも、しっかりお伝えできているのだなと安心できました。
安立:
本当に、音楽は一生の友、だと思っています。
ヤマハ音楽振興会 システム教育部 部長 水戸瀬
私は教材制作に関わる立場として、こちらが提供する教材を講師の方々の指導によってさらに魅力的に伝えていただくことで、子どもたちの個性を伸ばし成長を促すことができていると感じ、うれしく思います。子どもたちに感動を伝えられることがとても大事であり、その体験の積み重ねが、良い効果につながっていると感じました。
ヤマハ音楽研究所 所長 田山
次回は、ヤマハ音楽教室の経験者に高い数値があらわれた「多様性適応力」について伺ったコメントをご紹介していきます。