エレクトーンの3段鍵盤をフルに使って楽しむ弾き応えある曲集『エレクトーン・ラボ (中級~上級) ザ・プライム・アレンジメント ~あらゆる機種でキマる! 楽譜から音楽が聴こえるハイクオリティ・スコア~』が発刊になりました。
中心となってこの曲集をアレンジしたエレクトーンプレイヤーの柏木玲子さんに、この曲集にかける想いをうかがいました。
どんな曲集なのでしょうか?
エレクトーンの機能に頼りすぎずに、楽譜に書かれた情報を読み取りながら、シンプルなレジストで3段鍵盤の演奏を楽しんでほしい、という曲集です。機能に頼らない分、弾き応えがすごくあります。だからこそ、「弾けた!できた!」という満足感が得られる曲集になっていると思います。
曲集を制作したきっかけを教えてください
ジュニアエレクトーンコンクール2016のファイナルで、音色指定の無い3段譜が事前に提示され、出場者がそれぞれの解釈で演奏する「課題演奏」がありました。その課題曲『ロンドンデリー・エア』のアレンジを担当したのですが、今回の曲集の1曲目に収載したのは、この曲のアレンジをふくらませたもの。最新のエレクトーンの機能を駆使した演奏ももちろん素晴らしいのですが、その一方で機能やレジストレーションは必要最小限に、自分で表現を考える演奏もとても勉強になります。コンクールに出場した人だけでなく、もっと多くの人にこのような「楽譜から読み取って弾く」という経験をしてほしいと思い、曲集という形にすることができました。
アレンジャーは柏木さんだけでなく、ちょっと珍しい顔ぶれの4名がそろいました
中野正英さんと坂本有正さん、私から見るととてもお若い二人ですが(笑)、プレイヤーとしてもアレンジャーとしても活躍されていて、シンプルでとてもいいアレンジをしてくださっています。沖浩一さんは私からこの企画をお話ししたところ、「待ってました! そういった企画をぜひやりたいと前から思っていたんだ」というお返事で(笑)。とても自由な発想で、遊び心いっぱいのアレンジをしてくださっています。スタンダードあり、ディズニーナンバーあり、クラシックありと、タイプの違う名曲ぞろい。自分で弾いていてもいい曲ばっかりだと思います(笑)。海外の人にも弾いてほしいので、世界中の人が誰でも知っている曲ばかり集めたんです。
柏木さんがアレンジされた4曲について、解説をお願いします
『ロンドンデリー・エア』はコードネームをあえて書かずにアレンジ。コードで弾くのではない、旋律が重なって広がるハーモニーを味わってもらえたらうれしいです。
『亡き王女のためのパヴァーヌ』は美しい原曲を生かして、ボサノヴァのゆったりした雰囲気にアレンジしています。ボサノヴァの大家であるアントニオ・カルロス・ジョビンが「自分の音楽はフランスの印象派の音楽にヒントを得ている」と語っているように、ボサノヴァとラヴェルのクラシックにはどこか通じるものがあるんですよね。
『煙が目にしみる』は原曲がサビのあるきれいな曲なので、サビを大事にし、ハーモニーにこだわりながらそのままシンプルにアレンジしました。
華やかさが似合う『アイ・ガット・リズム』はジャズオルガンで。せっかく弾くならいっぱい拍手をもらいたい…そんな気持ちに応えてくれるアレンジです。
この曲集を、どんなふうに弾いてほしいですか?
まずは最初に言った通り、演奏するために必要な情報を楽譜からしっかり読み取って、練習して弾けたという満足感を味わってほしい。音楽のラインや構成を重要視してアレンジしていますので、3段鍵盤を弾く面白さを味わっていただきたいですね。簡単ではないですよ(笑)。
それからこの楽譜を素材として、自分なりに手を加えてくれてもいいと思っています。例えば『ホール・ニュー・ワールド』なんて、リズムを付けて弾いてみたくなるようなアレンジになっていますから、たくさんあるエレクトーンのリズムの中から曲に合ったものを選んでみるだけでも、リズムを知ることができて勉強になると思います。もちろん、リズムをゼロから作ってみるのもいいですよね。
音色を自分の好みのものに変えて、それに合ったテンポ感で弾いてみたり、ヴァイオリンやサックス、フルートなど他の楽器とアンサンブルしても面白くできるはず。
「こういう音楽にしたい」という気持ちはステキなことですから、この楽譜をどんどん料理していってほしいですね。
この曲集を手に取る方へ、メッセージをお願いします
「エレクトーンは楽しい!」です。私はエレクトーンのおかげでいろいろなジャンルの音楽に親しめ、エレクトーンを通して一流の音楽家たちと共演するなどたくさんの音楽経験を得られて、その経験はすべて今の私の財産になっています。エレクトーンが進化して、とても繊細な表現に応えてくれる楽器になった反面、機械のようで難しいという声も聞きますが、でもエレクトーンは3段鍵盤の楽器です。この曲集を入口にして楽器を演奏する楽しみを味わい、多くの人にエレクトーンから始まるさまざまな音楽体験をしてほしいと願っています。
柏木さんによる懐かしのエレクトーン(D-3R、E-70、D-700、FS-30…etc.)で奏でるスペシャルバージョンは必見です!