エレクトーン作品コンテスト2019エレクトーン作品コンテスト2019 受賞作品

コラボレーション部門

太田 英美さん
Stray(オリジナル曲)

コラボレーション部門

藤﨑 美咲さん
Concerto for Broken Piano and Orchestra(オリジナル曲)
佐藤 匠さん
「花」~鏡の森より(オリジナル曲)
山本 実季さん
赤とんぼ(課題曲)

幼児に聴かせたい音楽部門

森 花音さん
80日間世界一周(課題曲)
堀 奏衣さん
山の音楽家(課題曲)

動画を見る
(Youtube)

6月7日受賞作品収録会でのゲスト演奏
◆安達 香織(エレクトーン) ◆岡部 磨知(ヴァイオリン)
  1. In The City Of Night(作編曲:安達香織)
  2. knight of night(作曲:岡部磨知、編曲:安達香織)

受賞者コメント

優秀賞:太田 英美さん(名古屋音楽大学 大学院)

[画像]太田 英美さん
部門
コラボレーション部門
作品タイトル
Stray(オリジナル曲)
コメント
この度はこのような賞をいただき、大変嬉しく思っております。ありがとうございます。
この曲「Stray」 は、「迷っている」という意味があります。その意味通り、私は迷っていました。なかなか思うようにいかないことばかりで、そんな葛藤の中からできた曲です。曲始めに出てくる16分音符のフレーズがその迷いを表現しており、あらゆる場所に出てきます。
この曲は機械的でシーケンスなフレーズが多く、当初はその部分を演奏しておりましたが、エレクトーンのオーディオ機能を使用することで、オーディオファイルを再生しながら新しいフレーズを演奏することにより、ヴァイオリンとのコラボレーションをより充実させることができました。
今回コラボレーション楽器として使用したヴァイオリンは、音域が広く、奏法も色々あります。エレクトロなジャンルの中でどうしたら生楽器の魅力を引き出せるのか、エフェクトも使用し、生音と電子音のコントラストを付けたりと試行錯誤しました。
人には色んな「迷い」があると思います。そんな迷いで立ち止まった時に、自分で打開して自ら道を切り開いていけますように…この曲を聴いてくださった方々に、そんな希望が届くと嬉しいです。
学生として学べるのもあと一年、今回の受賞を励みに、更に精進してまいりたいと思います。
応援してくださったすべての皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
楽譜のダウンロード(レジストレーション番号掲載)[3.10MB]
— 月刊エレクトーン9月号に掲載された楽譜にレジストレーション番号が追加されています。
レジストレーションデータのダウンロード[245KB]
※レジストレーションデータについて
Electone1、Electone2の2台分のデータとなっています。
Electone1のデータには演奏データも含まれています。
演奏にあたり、Electone1のデータを再生してAUDIO RECORDINGし、それに合わせてElectone2パートを演奏します。冒頭、演奏が始まるまで2小節分(リズムデータは4小節分)の空白があります。
Electone2のデータにはRhythmデータも収録されています。冒頭2小節+8小節(リズムデータは4小節+16小節)はカウントとなっています。

入選:藤﨑 美咲さん(会社員)

[画像]藤﨑 美咲さん
部門
コラボレーション部門
作品タイトル
Concerto for Broken Piano and Orchestra(オリジナル曲)
コメント
この度は入選にお選びいただきまして、大変光栄に思います。
2019年は、自分の中で「自分らしさ」をテーマにしていて、「今までありそうでなかったものを作りたい」と思った気持ちを尊重し、"壊れたピアノ"協奏曲を作ろう、と決めてから作曲を行いました。
壊れたピアノとは、長年整備されておらず捨てられたアコースティックピアノをイメージしています。
レジストには、"Broken"要素としてランダム要素が多く取り入れられているため、打鍵のたびにピッチや音の調子、音が出ない鍵盤などが変わるよう、こだわって作りました。
毎回初めて弾くかのような難しさがありますが、同じ演奏は2つ存在しない特別な曲です。
反面、どこまで"Broken"にするか、ということについては非常に悩みました。
もっと、アコースティックピアノと定義できないような音色設定にすることも可能でしたが、この作品で目指す壊れたピアノを具体的にイメージして作曲する過程で、今の音色に仕上がりました。
テーマだった「自分らしさ」というところからも攻めたタイトルにしたので、評価を聞くのにはとても勇気が入りましたが、講評を真摯に受け止め、今後の作品に生かしたい考えです。
また、今後も失敗を恐れず、新しいことに挑戦する精神は大事にしたいと思います。
最後になりましたが、応援してくださった方々にこの場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。

入選:佐藤 匠さん(国立音楽大学)

[画像]佐藤 匠さん
部門
コラボレーション部門
作品タイトル
「花」~鏡の森より(オリジナル曲)
コメント
〈「花」~鏡の森より〉は2019年11月に国立音楽大学芸術祭にて公演した音楽劇「鏡の森」の中の1曲です。「20歳になる自分達に伝えたいこと。」をテーマに、脚本や音楽のすべてを同級生と共に創り上げ、「エレクトーンで面白いことしたい」という夢を叶えることができました。
この音楽劇はスマホに時間や心を奪われた主人公が、夢の中でそこに棲む妖精と出逢い大切なことを思い出す…そんなストーリーで、その中でもとても重要なシーンに歌われるのが、今回受賞した「花」という曲です。
この曲は、主人公が夢の中で妖精に貰った花に心を動かされ、初めて歌う曲です。
毎日がつまらなくて、でも本当はやりたいことあるのに、動けない。
本当は誰かに見つけてほしいのに、自分に嘘をついて心を閉ざしてしまう。そんな中妖精から貰った不思議な花を見て大切なことを思い出す。そんな主人公の心を音楽で表現しています。
曲を作るにあたり、エレクトーンのパートも歌詞も何度も何度も書き直しました。歌い手のいい所を如何に引き出すか考えたり、「もっといい表現があるはず!」と手直しをしたのはいい思い出です。
結果として、私の最も伝えたかった事が表現できたと思います。
「今しかできないことを、悔いのなきよう全力で。」
今まで20年間生きてきてお世話になった方々、先生方、そして今回このような発表の場を設けていただいた関係者の皆様に、心より感謝をいたします。

入選:山本 実季さん(京都女子大学)

[画像]山本 実季さん
部門
コラボレーション部門
作品タイトル
赤とんぼ(課題曲)
コメント
四季は、どの季節も素晴らしい景色を見せてくれます。特に秋の夕暮れは、繊細で複雑な心を表しているようです。日々流れるように過ぎる現実世界から解放されるような眺めですが、冷たい風と共にまた現実に戻されます。人の心の奥深さを表した秋を音楽で表現してみたいと思い、赤とんぼをアレンジしました。
綺麗な部分だけを見せるのではなく複雑な感情を出すことを課題にしていました。孤独や迷い、懐かしさ、情熱など様々な心があるから、きれいなものを見ると感動するのだと思います。
それを音楽で表現することはとても難しく、課題もたくさん残っています。まだまだ発展途上ですが、これからもたくさんの曲と共に成長していきたいです。
他の方々の作品の世界観やアイディアからとても刺激を受けました。また、審査してくださった方々の講評から沢山の課題を見つけることができ、貴重な経験でした。この機会を大切に、自分の音楽を表現できるように努力していきたいです。
ありがとうございます。

入選:森 花音さん(国立音楽大学)

[画像]森 花音さん
部門
幼児に聴かせたい音楽部門
作品タイトル
80日間世界一周(課題曲)
コメント
今回はこのような賞に選んでいただき大変光栄です。私はいつも編曲をする際、わかりやすいコンセプトにすることを心がけていますが、今回コンテストに応募するにあたり、誰もがワクワクできるようなアレンジ、そしてエレクトーンといういろんな音色が出せる楽器だからこそできることを!と思い、「80日間世界一周」という名の通り世界を巡ってみることにしました。80日間ではなく2分間で世界を旅する形になりましたが(笑)、空を飛んだり、世界の楽器を使ったり、楽しくアレンジすることができました。まさか選んでいただけるとは思わず、結果を見てとてもびっくりしていますが、私のアレンジが少しでも伝わっていたら嬉しいです。
小さい頃からエレクトーンをやってきましたが、ずっと変わらないのは音楽がだいすき!という気持ち。これからもその気持ちを忘れず、自分らしい音楽を追求していきたいと思います。
最後になりましたが、今回審査してくださった先生方、いつもお世話になっている先生や友人、そして私の作品を聴いてくださった全ての方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。

入選:堀 奏衣さん(ヤマハ音楽教育システム講師)

[画像]堀 奏衣
部門
幼児に聴かせたい音楽部門
作品タイトル
山の音楽家(課題曲)
コメント
この度は素晴らしい賞をいただくことができ、嬉しく思います。
皆さんの良く知っている「山の音楽家」を森の奥で行われている動物たちのパーティーをイメージして編曲しました。
朝早くから準備を始め、準備が終わる頃には沢山の動物たちが集まってきます。そしてパーティーでは楽しく踊っていたり、ファンファーレも聞こえてきます。何かのお祝いでしょうか。
普段システム講師をしているので生徒に楽しんで聴いてもらうことを想像し、動物の鳴き声を至るところに使ってみました。
どの動物がどう登場するか鳴き声ももちろん、音色からもイメージし探していただけたら嬉しいです。
最後になりましたが、審査してくださった審査員の皆様、いつも支えてくださる皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

審査員コメント<総評>

向谷 実氏

全部聞き終わった時に、さまざまなタイプの音楽があったと思われるのですが、全体的には、音で塗りつぶしてしまっている曲が多く感じられました。
とくにストリングス系の和音はその傾向が多く、せっかく用意されていた細かい音が聞こえづらいものもありました。
リズムを主体とした曲は、大事なリズム感にやや不安を感じ、ハーモニーの捉え方もあまり目新しくなく、無難なアレンジが多かったと感じました。
使用された音色にはもう一つ工夫があってもよかったかと思います。生楽器と比べると辛く感じるものがかなりありました。
提出音源の録音方法にはばらつきがあり、せっかくのいい演奏も音の悪さで印象が変わってしまうのも、残念だと思います。
何曲かは挑戦的なものもあったのですが、全体的には正直もっと攻めてもらいたかったというのが私の感想です。

守屋 純子氏

今回聴かせていただいたどの作編曲作品も、大変素晴らしく、個性的で、レベルの高い内容でした。甲乙付け難い作品群の中で、敢えて高得点をつけた基準は、<作者の世界観が伝わってくるかどうか>です。その曲やアレンジを通して、聴く側に何を伝えたいか、どんな世界を表現したいかが、わかりやすく、ストレートに伝わってくる作品を、より評価しました。エレクトーンはどんな奏法も音色も可能にする魔法の楽器ですが、だからこそ、アイディアを詰め込みすぎて、全体像が散漫になってしまう危険性も大きいです。 特にコラボレーションの場合、現実の楽器には、それぞれに特性や奏法上の限界がありますので、実演の際、効果的かどうかも考慮に入れました。
そして、これはやや抽象的な発言になってしまいますが、どんなジャンルの音楽であれ、<夢がある><明日への希望が感じられる>作品かどうかということも、とても重要だと思っています。
今後も、確固たる主張を持ち、それを発展させていく、しっかりした物語性と構造を持った作品に期待しています。

新垣 隆氏

全ての作品をひと通り聴き「評価」するにあたって、いくつかの言葉が(大変凡庸なものですが)よぎります。ユニーク、オーソドックス、自然さ、いろいろな要素が入くんだ精巧なもの、up to date、回顧的、技術の安定度、完成品ではないかもしれないが魅力的なもの・・・等々。
そして改めて各々の作品を思い返した上で、私の評価の判断は(身も蓋も無い事ですが)、私自身の「好み」に依りました。上に挙げた全ての要素は、私の創作に於いても常に関わる事なので、結局(同じ事の繰り返しとなっているのですが)評価の結果は私自身を反映したものになります。今度はその私が評価されるでしょう。
ひとつだけ「編曲」にはある程度(ただし明解な)自分なりの基準があり、原曲と編曲との関係をみます。
原曲との距離を測る、という事なのですが、つまり「原曲はなにか」という視点です。それがどの様な状況の中で生まれ、どのような歴史を辿って来たのか(それには様々な「カヴァー」も、またふくまれるでしょう)を読み解く作業です。そこから「近い」(原曲に忠実な)から「限りなく遠い」まで、様々な距離が生じる訳です(本来はオリジナルも同じく、過去との距離を否応なく持つのかもしれません)。そしてここでも、以上の前提を踏まえた上で、評価の基準は「私の好み」です。ですから結局、再び、私という「聴き手」が問われる事でありましょう。