
音楽を通して子どもたちの豊かな感性を育む活動を続けてきたヤマハ音楽教室。2004年よりスタートし、今年で18回目を迎えた「ヤマハ・ガラ・コンサート」は、ジュニアオリジナルコンサート(JOC)、ヤマハエレクトーンフェスティバル(YEF)、ヤマハジュニアピアノコンクール(YJPC)など、ヤマハで学び育つ、若き音楽家によるコンサートとして年に一度開催してきました。今年は2022年9月11日(日)Bunkamuraオーチャードホール(東京都渋谷区)にて開催しました。
オープニングを飾ったのは、2021年度JOC参加作品より田中結菜(たなか ゆいな・12歳)さんの『新しい世界へ』。テーマは、まだ知らない世界へ一歩飛び出す勇気と、あふれる希望です。中間部の静かな場面では、暖かい日差しの中で幸福感に包まれるような、キラキラ弾ける演奏。クライマックスでは、新しい世界へ飛び出すワクワク感とドキドキ感が見事に表現されました。
『森のソナチネ』(2021年度JOC参加作品)を演奏したのは岡本京香(おかもと きょうか・9歳)さん。明るい日差しが差し込む森の中で、リスやクマなどの動物たちが無邪気に遊びまわる風景が目に浮かびます。『朝の散歩道』に続く2曲目の『水辺のハーモニー』は、アルペジオで水のせせらぎを表現し、光またたく星空が会場全体に浮かび上がるよう。最後の『動物たちのパーティ』では、ワクワク感があふれ出ました。
自らの名前をモチーフにした『凪の大冒険』(2021年度JOC参加作品)を演奏したのは、佐藤凪紗(さとう なぎさ・10歳)さん。水平線から朝日がのぼろうとする夜明け、主人公は仲間たちと冒険に出発します。アクシデントに遭遇しながらも、折れない強い意志を胸に、決意も新たに冒険を続ける様がエレクトーンで鮮やかに表現されました。激しい荒波を乗り越えたあとの、凪の海。動と静、2つの対象的なシーンが心に残ります。
フルートとのアンサンブル『虹の向こう側』を演奏したのは、福田圭花(ふくだ よしか・11歳)さん。フルート奏者は小森史步子さん。「虹の向こう側には何があるのかな?」という圭花さんの無邪気な好奇心が膨れ上がります。虹は天からの祝福と幸運のサイン。フルートとの息の合った演奏で、爽やかな風が会場内を吹き抜け、雨上がりの水たまりに映った美しい青空が表現されました。
続く5人目は、第6回YJPC 12歳以下の部門で第1位を受賞した樋口明依(ひぐち めい・13歳)さん。リストの『2つの演奏会用練習曲S.145』で、1曲目『森のささやき』は木々の葉がザワザワと風に揺れる森の中に、ポツンと佇んでいるような心のざわめきが、2曲目の幻想的でリズミカルな曲想の『小人の踊り』は、メルヘンの中の妖精が奔放に飛び回る様子が見事に表現されました。思わず体を動かしたくなるような楽しい演奏でした。
第1部の最後は、アンサンブル曲『Time Slip ~古の乱~』(2021年度JOC参加作品)。ピアノは伊東奏詠(いとう そうた・11歳)さん、エレクトーンは千葉朱音(ちば あやね・11歳)さん。未来から過去へタイムスリップして、戦いに巻き込まれるストーリーで観客を魅了しました。現実の世界へ帰りたくても帰れないシーンや、これを逃したらもう戻れない手に汗を握る焦りを、息のあった演奏で表現しました。
第2部のオープニングは、ギセラ・ベルタ・アムラン(16歳)さんが奏でる『Elysia』(2021年度JOC参加作品)。インドネシア、ジャカルタ在住のアムランさんは、今回映像での出演となりました。全身で踊るように演奏する姿と華麗なエレクトーンの音色によって、平和の森「エリシア」で始まった戦い、葛藤、裏切り、そして和解へ、森に住む人間と妖精たちの共存の壮大なドラマが繰り広げられました。
8番目に登場したのは、YEF2021一般部門で第1位を獲得した井上暖之(いのうえ はるゆき・17歳)さん。これまではあまり使ってこなかった電子音の開拓に果敢に挑戦し、たくさんの発見と驚き、葛藤と共に『neo-syntheid』を創り上げました。エレクトーンならではの電子音楽に、観客一人一人がそれぞれの「neo」=これまでとは違う新しい世界へと誘われました。
続いては、伊澤晶子(いざわ しょうこ・11歳)さんの『To the Unknown World~バイオリンとピアノのための~』(2021年度JOC参加作品)。バイオリン奏者は柿沼紀子さん。伊澤さんにとって、まさに題名通りとなる未知への挑戦となった初のアンサンブル曲です。森の中を知らない世界へと駆け抜けるイメージで創作し、人々の原風景に触れるどこか懐かしさを感じさせるメロディー。踏み入れた新しい世界で、新しい自分を発見した喜びに満ちた演奏でした。
そして、佐々木新平氏指揮によるヤマハ吹奏楽団との共演プログラムへと移ります。
一人目は、『暁の彼方へ~明日にかける光~』(2021年度JOC参加作品)を演奏した元木奏太(もとき そうた・12歳)さん。「夜の闇はなりを潜め、東の空では柔らかな光が雲を破り始めます。風にそよぐ木々の音。朝を告げる鳥の声。青い世界が彩りに満ちていく」そんな景色をイメージしてこの曲を創ったのだそう。時折、指揮者のほうに目を配りお互いの呼吸を合わせながら、情緒的な演奏で観客に特別なエモーションを抱かせました。
最後を飾ったのは、岡田花奏(おかだ かなで・16歳)さんの『Piano Concerto~Be myself~』(2021年度JOC参加作品)。地元の徳島県でのコンサート活動も精力的に行うサッカーが大好きな高校1年生です。岡田さんは「どんな時も私が大切にしてきたのは “私らしさ” です。私のカラーを詰め込んだJOC最後の作品で、指揮の佐々木新平さん、ヤマハ吹奏楽団の皆さんと共演できるのは本当に幸せです」と喜びを伝え、全身全霊で演奏しました。おおらかでバイタリティ溢れるエネルギーと、繊細で感受性豊かな演奏に、会場には割れんばかりの拍手が鳴り響きました。

- 前編
- 10月15日(土)13:30-14:00
- 後編
- 10月22日(土)13:00-13:30
- 再放送 前編
- 11月12日(土)23:00-23:30
- 再放送 後編
- 11月19日(土)23:00-23:30
協賛:三井住友海上火災保険株式会社、ヤマハ株式会社