音であふれた現代社会。街角で、お店の中で、家でテレビを見ていて、カラオケへ行って、学校の授業で、部活で…。私たちは、日頃さまざまな場面でいろいろな音楽を聴き、ときには自分で歌を口ずさんだり、楽器を演奏したりしています。最近では、未就学児向けのコンサートや親子参加型のイベントも増えて、幼児期の子どもであっても多様に音楽に親しみ、ふれ合う場所が広がってきています。
音であふれた現代社会。街角で、お店の中で、家でテレビを見ていて、カラオケへ行って、学校の授業で、部活で…。私たちは、日頃さまざまな場面でいろいろな音楽を聴き、ときには自分で歌を口ずさんだり、楽器を演奏したりしています。最近では、未就学児向けのコンサートや親子参加型のイベントも増えて、幼児期の子どもであっても多様に音楽に親しみ、ふれ合う場所が広がってきています。
これまでヤマハ音楽研究所では、子どもと音楽の関係、親子の音楽の楽しみ方などにフォーカスして、いくつかのアンケート調査を実施してきました。今回は4〜5歳の子どもを持つ保護者を対象に2011年2月に実施した意識調査の結果から、親子の音楽の楽しみ方をテーマに、その傾向についてご紹介します。
企画
ヤマハ音楽研究所
調査期間
2011年2月3日〜10日
調査方式
インターネットを利用したアンケート調査
調査対象
4歳児ならびに5歳児の保護者1042名
表1 サンプル表
男 | 女 | 計 | |
---|---|---|---|
保護者 | 426 | 616 | 1042 |
(うち専業主夫/専業主婦) | (2) | (523) | (525) |
子ども | 523 | 519 | 1042 |
グラフ1 就園状況
幼稚園 | 699 |
保育所 | 267 |
その他 | 10 |
通っていない | 66 |
4〜5歳の子どもたちの日常生活といえば、家庭、あるいは幼稚園や保育所で過ごす時間が中心になっている場合がほとんどです。まずは家庭以外の場での、子どもたちが音楽を体験する機会を見てみましょう。
保護者の方々に、「子どもの通う幼稚園・保育所での音楽の専門家による音楽の時間(音楽指導、鑑賞会など)の有無」を質問したところ、「ない」という回答が最も多く、全体の62.5%でした(グラフ2)。一方、「ある」という回答の中では「週1回以上」という回答が13.9%で最も多く、定期的にそうした時間が設けられていることがうかがえます。
社会全体で子どもの成長を見守ろうという声が強まるに伴い、地域に暮らす音楽の専門家が幼稚園や保育所を訪れるといった企画は以前より増えているといわれています。しかしここでは、そうした機会はまだ少ないという結果でした。
グラフ2 幼稚園・保育所での音楽の専門家による音楽の時間
週1回~ | 13.9 |
月1回~ | 10.4 |
年1回~ | 13.3 |
ない | 62.5 |
次に、保護者の方々に、「子どもと一緒に家族で音楽イベントなどの参加型の催しに行く機会の有無」を質問したところ、ここでも「ない」という回答が最も多く、全体の59.5%でした(グラフ3)。子どもの性別で分けると、女の子(27.4%)より男の子(32.1%)の方で「ない」という回答がやや多いという結果でした。
一方、「ある」という回答の中では「年数回」という回答が17.5%、「年1回」が17.2%でした。「月1回以上」という回答も5.9%を占め、中には非常に積極的に参加している家庭もあるようです。
グラフ3 家族で音楽イベント等の参加型の催しに行く機会
男の子 | 335 |
女の子 | 285 |
月1回~ | 61 |
年数回 | 182 |
年1回 | 179 |
ない | 620 |
保護者の方々に、「(幼稚園や保育所以外の)ホールで行われるコンサートなどで子どもが音楽鑑賞する機会の有無」を質問したところ、ここでも「ない」という回答が最も多く、全体の66.3%でした(グラフ4)。子どもの性別で分けると、女の子(31.1%)より男の子(35.2%)の方で「ない」という回答がやや多いという結果でした。
一方、「ある」という回答の中では「年1回」という回答が最も多く21.1%でした。「年5回以上」という回答は3.0%にとどまりました。
グラフ4 コンサート等で子どもが音楽鑑賞する機会
男の子 | 367 |
女の子 | 324 |
年5回~ | 31 |
年2、3回 | 100 |
年1回 | 220 |
ない | 691 |
全体的に、先述の「参加型の催し」と比較して、「ホールでのコンサートなどでの音楽鑑賞」の方が、未体験の子どもの割合が高いという結果になりました。ヤマハ音楽研究所では、同様の調査を海外でも実施しましたが、こうした機会が「ない」という回答は、ほかの国々より日本でとりわけ多い傾向にありました(出典:ヤマハ音楽研究所2010年度研究活動報告書)。
ホールや劇場、あるいは美術館や博物館など、公共施設でのイベントが広がりをみせる中、今回の調査でも子どもが家庭以外の場所でイベントやコンサートの体験機会を得ているという回答もある一方で、頻度としては多くても「年に数回」という回答がほとんどでした。日常的に子どもたちが音楽を楽しむ場として、その中心はやはり家庭にあると推察されます。
ここでは、保護者の方々に、「幼稚園・保育所・習い事以外での、音楽の楽しみ方とその頻度」について伺いました。
まず、「音楽を聴く(CD、DVDなど)」「歌をうたう」「楽器を弾く」※「音楽遊びをする(絵かき歌、手遊び、体を動かす)」「音楽ゲームを楽しむ(Wii、PS、パソコン、iPadなど)」の項目別に見てみましょう。
グラフ5から、80%以上の子どもが「(歌を)うたう」機会を持ち、70%近くが「(音楽を)聴く」機会を持っていることが分かります。反対に、「ほとんどしない」という回答が最も多かったのは「音楽ゲーム」で、72.4%でした。次に多かったのは「楽器を弾く」で、52.1%でした。
グラフ5 幼稚園・保育所・習い事以外での音楽の楽しみ方と頻度
先述の結果を、子どもの性別でまとめたのがグラフ6です。「ほとんどしない」という回答は、「音楽ゲームを楽しむ」の項目を除き、すべて女の子より男の子が多くの割合を占めました。中でも「楽器を弾く(演奏する)」では回答の差が大きく、「ほとんどしない」という回答は男の子で61.0%であるのに対し、女の子では43.2%にとどまりました。
グラフ6 男女別「ほとんどしない」という回答
それでは、保護者の皆さんご自身は、どんな音楽を好んで聴いているのでしょうか。
保護者の方々に、「あなたがよく聴く音楽ジャンル」について質問したところ、「J-POP」が最も多く、86.1%でした。次に多かったのは「洋楽」※(50.7%)で、「よく聴く」という回答が半数を超えたのはこの2つのジャンルのみであることから、全体的にポピュラー音楽を頻繁に聴いている方が多いととらえられます。(グラフ7)
グラフ7 保護者のよく聴く音楽ジャンル
先述の「家族で音楽イベントなどの参加型の催しに行く」機会の結果を、保護者のよく聴く音楽ジャンル別のグループで見ると、各グループにおいて「月に1回以上」の高い頻度で参加型の催しに行くという回答の占める割合は全体平均5.9%に対し、「ジャズ」で最も高く11.8%、「クラシック音楽」で9.8%でした(グラフ8)。そうした機会が「ない」という回答が半数以下だったのも、この2グループのみでした。
グラフ8 よく聴く音楽ジャンル別「家族で音楽イベントなどの参加型の催しに行く」機会
同様に「ホールで行われるコンサートなどで子どもが音楽鑑賞する」機会についても、各グループにおいて「年数回以上」の高い頻度で行くという回答の占める割合は「ジャズ」で最も高く30.1%、「クラシック音楽」が次いで24.9%でした(全体平均12.6%)。
この2グループでは、そうした機会が「ない」という回答は半数以下で、ジャズやクラシックをよく聴く保護者に、とりわけこの種のイベントやコンサートへの高い関心がうかがえました(グラフ9)。
グラフ9 よく聴く音楽ジャンル別「ホールで行われるコンサートなどで子どもが音楽鑑賞する」機会
この調査では、子どもたちがどのように音楽とふれ合っているのか、また、保護者の方がどのように音楽を楽しんでいるか、についての傾向を調べました。ヤマハ音楽研究所では、これからも音楽と人々の関わりについてさまざまな角度から調査を行っていきたいと考えています。