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音楽を聴くと、手足を動かしたり、歌っているように声を出す赤ちゃんは多いですよね。ところが赤ちゃんにはそれだけにとどまらない、音をさまざまな角度から理解していると見られる驚きの実験報告があります。赤ちゃんの知られざる「音をとらえる感覚」について、駒沢女子大学人文学部心理学科准教授・丸山慎先生にお話しいただきました。

教えていなくても音の高さの高低と視線の動きがマッチする

音楽を聴きながら、音の響きの美しさを味わったり、メロディーを口ずさんだり、リズムに合わせて身体を揺らしたり、私たち大人はさまざまな音楽の楽しみ方をしています。では、赤ちゃんや子どもはどうなのでしょうか?

 

丸山先生のお話によると、3~4カ月の赤ちゃんでも、音楽を聴かせると、さかんに手足を動かしたり、声の多様さが増す場合があるといいます。また、音楽を聴きながら、赤ちゃんと同じ動きをすると共感を生みやすいという研究結果もあるとか。

さらに興味深い報告があります。3~4カ月の赤ちゃんを対象に、音の高さの変化に合わせてボールが上下に移動する動画を用いた実験です。

 

[A]画面に映し出されたボールが上から下に移動すると、音も高い音から低い音へ移行する場合

→ 視覚と聴覚の変化がマッチしている

[B]同じボールが下から上へ移動しているのに、音は高い音から低い音に移行する場合

→ 視覚と聴覚の変化がミスマッチしている

 

AとBを比較すると、赤ちゃんはAをより長くみたという結果になりました。つまり、ボールの動きと音の高さの上下動が一致した動画のほうが、3~4カ月の赤ちゃんたちの注意をより惹きつけたというのです。

 

また、10カ月の赤ちゃんを対象に、アイトラッカーと呼ばれる眼球運動を計測する装置を用いて実施した丸山先生ご自身の研究では、上行音階(音が上がっていく音階)を聞かせたときに、赤ちゃんの視線がモニターの上部に移動しやすいという傾向がみられました※1

この図では、暖色系の色が濃くなればなるほど(この図では赤くなればなるほど)、赤ちゃんはその部分をじっと見つめていたということを意味しています。

これらの結果によって、音は聴覚だけではなく、視線の向きなど視覚にかかわる運動にも影響していることがわかります。まだ言葉を話せない、音楽経験が限られている赤ちゃんでも、音楽に触れることで身体的、視覚的、空間的などさまざまな角度から感覚が刺激されているようです。

子どもの多感覚的な音体験を見守ってあげたい

子どもの音体験とは、耳で聞くだけではなく、さまざまな感覚とリンクしていることは「拍手遊び」にも現れています。「拍手遊び」とは、注意深く拍手の音を聞いて、どの手の形の音なのかを当てる遊びです。

 

a:左右の手を少しずらした形

b:左右の手で握手をするように組み合わせた形

c:両方の手のひらをぴったり合わせた形

手の形によって拍手の音は異なります。私たちは、拍手の音を聴いたときに、音だけでなく、その音の特徴を生み出す「手の合わせ方と動かし方」も聞き取ることができるのだと丸山先生は言います。

 

子どもの音体験というと、何か特別な機会や環境を用意しなければいけないと身構えてしまうママやパパも多いかもしれません。でも、音体験とは、声を出したり、手足を自由に動かしたり、日常の何気ない「音遊び」に根ざしているようです。子どもの発達のために、日常の音にまつわる自由で自発的な探索行動を見守り、寄り添い、一緒に楽しむことを大切にしたいですね。

 

  • ※1 Maruyama, S., Watanabe, H., & Taga, G. (2011). Spatial awareness induced by pitch direction: A study on the developmental origin of audio-visual congruence in target detection task. The 15th European Conference on Developmental Psychology. Bergen, Norway 23-27 August 2011.

※本記事は2018年8月31日、ヤマハ音楽研究所のイベント「子育て×音楽―音楽でより深まる親子のきずな―」にて行われたセミナーの内容を抜粋・再録したものです。

 

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◇プロフィール

丸山 慎(まるやま しん)
駒沢女子大学 人文学部 心理学科 准教授
専門:発達心理学、認知心理学、生態心理学、音楽心理学

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