以前、ヤマハ音楽研究所では、50名の団塊世代を対象に「音楽と暮らし」についてワークショップ形式のリサーチを行いました。調査で得ることのできた「音楽と暮らし」のかかわりについてのエピソードを、全部で10種類のタイプに分類してみました。あなたに当てはまるものを見つけてみてはいかがでしょうか。
①ながら聴き
タイプ家事をしながら、運動をしながら、CDやラジオなどで青春時代の曲を聴くタイプ。
②こだわりタイプ
1人で音楽に没頭しながら、昔を懐かしむタイプ。このタイプは、聴く音楽へのこだわりも強く、良質な音を追い求める傾向がありました。
③会いに行くタイプ
仲間と一緒に、「あの人」のコンサートやイベントに行きます。世代や関心を共有する相手と一緒に行動したいという気持ちが行動につながります。とくに女性に多くみられたタイプです。
④孫と一緒タイプ
孫とのコミュニケーションが音楽活動と結びついているタイプです。孫にとって身近な音楽を聴かせてもらう、孫と一緒に音楽イベントに参加するなど、活動の形態はさまざま。
⑤カラオケタイプ
行きつけの居酒屋やカラオケバー、地域のサークル仲間などで、カラオケを歌って盛り上がるという回答も多く見られました。とくに大勢で過ごすことに楽しさを感じる、社交的な男性に多くみられました。
⑥ひとり上手タイプ
カラオケなどは恥ずかしいけれど、一人でこっそり青春時代の歌を歌います。小さな声で口ずさむケースも、大声で歌うケースもあり。性別など特定の属性に関係なく、広く見られました。
⑦いまどきタイプ
たとえうろ覚えでも、気に入った最近の曲なら口ずさむタイプです。新しい音楽への関心が強く、とくに女性に多くみられました。
⑧バンド結成タイプ
最近ブームの「おやじバンド」を結成するタイプ。若いころのバンド活動を再開したり、かつて好きだったグループの曲を再現します。とくに男性に多く見られました。
⑨ランクアップタイプ
若いころは手が届かなかった楽器にチャレンジするタイプです。「バンド(仲間)」の有無にかかわらず、男女ともに回答がありました。
⑩ダンスタイプ
地域のサークルやダンス教室などで、あこがれの社交ダンスを始めるタイプ。華やかな衣装へのあこがれや健康への意識から始めています。女性に多い傾向ですが、夫婦で参加しているという回答もありました。
調査や分析の結果、団塊の世代における「音楽と暮らし」のかかわり方には、次の2つの方向性があると考えられます。
(1) 青春時代や昔はかなわなかった夢への憧憬、充実したシニアライフへの展望などから、音楽的な諸活動に能動的にかかわる
(2) 自分の子どもや孫、あるいは仲間とのコミュニケーションを促進させ、老いとアクティブに向き合うために、生活に音楽を取り入れる
「バンド活動をする」という選択一つをとっても、懐かしさや自分の世界に没頭したい場合と、仲間の輪を広げ音楽を楽しみたいという場合とでは、音楽に求める役割に異なる方向性がみられました。また、青春時代を主とした過去への思い・あこがれの強さと、未来もアクティブに暮らしたいという意欲が音楽活動に深くかかわることと、そうした思いのバランスや動機が人によってさまざまであることも確認できました。
団塊の世代もいよいよ70代。人生100年時代においては、まだまだ元気に活躍し、ますます音楽を楽しんでいただきたい年代です。ヤマハ音楽研究所では、今後も音楽がさまざまな世代の生活にもたらすものについて、引き続き調査や考察を行っていきたいと考えています。
(ヤマハ音楽研究所)